吸血鬼の空間

□悪戯な彼の遊戯
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※吸血注意




「授業始めるぞ、教科書のP24を開けー。」

今は国語の授業が始まったばかりだが、隣の席にいるアヤトくんは教科書もノート、筆記用具も出さずに机に突っ伏して寝ていた。
私はアヤトくんの肩そっと触れ声をかけた。

「アヤトくん、起きて?授業始まったよ・・・」

「んー・・・もう吸えね・・・」

もう、どんな夢見てるの!
寝言言ったと同時に私の方に顔を向けたアヤトくんの顔を私はじっと見つめてしまった。
普段開かれている黄緑色の瞳は伏せられ、鋭い牙のある口は薄く開かれていたが閉じられていた。

(そういえば寝顔、初めて見た・・・綺麗な寝顔。わっ、まつ毛長い。それに髪の毛・・・・・・少しくらい、いいよね?)

私はアヤトくんを起こさないように彼の頭をそっと撫でた。
予想通りふわふわの髪はまるでビロードのような手触りだった。

「何してんだよ。」

ふいに聞こえた声で我に帰ると、アヤトくんは片目を開け、その吸い込まれそうに綺麗な黄緑色の瞳で私を見ていた。
私は急に自分のしていたことに恥ずかしくなり手を離した。

「あ、えっと、これは・・・」

「ふぁ、よく寝たぜ・・・ちっ、まだくそつまんねぇ授業やってんのかよ・・・暇だぜ。」

私がしていたことには何も言わず、黒板を見て興味がない授業だと分かると再び寝ようとしてた。
レイジさんからアヤトくんがサボらないように見張っててくれって言われたから、私はアヤトくんが寝ないように阻止した。

「だ、ダメだよちゃんと授業受けないとっ」

「教科書ねぇ・・・」

え?
レイジさんに怒られるからって言おうとした言葉を遮って出てきた言葉は信じられないものだった。
何のために学校に来てるのもうっ!

「じゃ、一緒に見よう?」

「ふっ、分かってんじゃねぇか。んじゃあチチナシの方に机寄せっからな。」

「え、ちょっ、アヤトくん。」

私は少し慌てた。
だって、アヤトくんの顔が面白い事を思いついた顔をしていたからだ。

「んだよ。なんもしねぇよバーカ・・・それともあれか?期待したってか?」

「そんな訳ないでしょ!」

私は小さい声で否定した。
寄せられた机に先生が指定したページを開き置いた。
アヤトくんは開かれたページを見つめていたので、私は授業に集中し黒板に書かれた文字を板書した。


「ひゃ・・・っ」

書き取りをしているといきなりうなじがぞくっとし、小さく上擦った声が出てしまった。
横を見ると、アヤトくんがニヤニヤしながら私を見つめていた。

「くくっ、よく我慢できたな?お前うなじ弱えのによ。
我慢した声、可愛かったぜ?」

「ア、アヤトくん・・・授業なんだから変な事しないでよっ!」

私はうなじを手で隠し、ひそひそ声で話した。
先生や周りの生徒には気づかれてないみたいだったからよかった。
再び黒板に目を向けようとしたら、アヤトくんは私の髪に触れ、指に絡めて楽しそうに遊んでいた。

「え、アヤトくん?」

「・・・お前の髪、柔らかいな。それに、いい匂いだ。」

アヤトくんは指に絡めた髪を自分の口に持っていき、私の髪に触れるだけのキスをした。
私はそれを見て耳まで真っ赤になってしまった。

「っ・・・アヤトくん・・・」

「くくっ、何考えてんだ?甘い匂いさせやがって・・・あー、くそっ我慢できねぇ・・・ユイ、手貸せ。」

「え?う、うん・・・」

私は言われた通り指をアヤトくんに近づけた。
でも、途中で近づける手を止めた。
アヤトくんの瞳が『アノ』光を宿していたから・・・

「やっ・・・」

「おっと、逃がすかよ・・・声、抑えろよ?バレるぜ?
ん・・・っ・・・は、ぁ・・・」

私の手首を掴んだアヤトくんは私の指に牙を突きたて、溢れる血を啜った。
私は声が漏れないように空いた手で口を抑えるだけで精一杯だった。

「ア、ヤトく・・・っ・・・」

「はぁ・・・ユイ・・・」

アヤトくんの唇が私に近づいてきた所で授業の終わりを知らせるチャイムがなった。
私はそこでハッとし、掴まれてる手を引っ込めた。

「おいっ!」

「つ、次!移動教室だから!」

私はさっと椅子から立ち上がり素早く次の授業の準備をし、逃げるように教室から出た。

「・・・ちっ・・・」

私は教室から見えない場所の壁に寄りかかり、自分の指を見た。
傷の塞がってない痕からはまだ少し血が出ていた。

「・・・・アヤトくん。」

私はそっと自分の唇に触れた。
どうして?アヤトくん・・・なんで、キスしようとしたの?
あんな、見たことない優しい目で・・・私、勘違いしちゃうよ・・・
なんで私、嫌じゃないんだろう。どうして逃げようと、本気で嫌がったりしないんだろう。

「・・・あぁ、そうか。私・・・」

アヤトくんのことが・・・・


side.Y END
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