吸血鬼の空間

□揺らめく赤
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「はぁ、疲れた・・・」

私は夜間着に着替え、ベットに横になった。
今日は休日だったのだが、さっきアヤト君に血を吸われたばっかりでクラクラしている。
ここに来てから、他の兄弟達に沢山血を吸われた。
毎日が貧血で学校でも倒れたりしたことが何回かあった。

「・・・治り遅いなぁ。」

首筋に付けられた牙の痕は、何回も吸われているため治りが遅くなっていた。
絆創膏をしていても意味がなくなっていた。
私はベットから起き上り、つかの間の癒しであるアロマキャンドルを焚くことにした。

「今日は、ローズの香りにしようかな。」

ベットサイドのテーブルに置き、火を灯した。
暫くすると甘い薔薇の香りが広がった。
すると私の部屋をノックする音が聞こえた。

「はい。」

ドアを開けると、そこにはシュウさんが立っていた。

「・・・甘っ、なんだよこの匂い。」

「え、あのっ。」

シュウさんは勝手に私の部屋に入り、私を抱きしめた。
急だったので私は何も反応できなかった。

「この牙、アヤトだろ?」

「いたっ!」

シュウさんが後ろ手で鍵をかけたのが分かり、私はびくっとした。
そして、アヤト君に吸われた痕を隠していた絆創膏をはがされ傷跡を押された。

「あんたはなんで他の奴らに・・・っ・・・」

突然会話が途切れたと思ったら、私を抱きしめていたシュウさんの肩口がカタカタと震えていたのが見えた。
呼吸も荒く、何かに脅えているように感じた。

「シュウ、さん?」

「っ・・・な、何でも・・・ない。」

そんな事思えなかった。
いつものシュウさんらしくない、震えた声だったからだ。
私いは肩を押し、ゆっくりとシュウさんの顔を見るとある一点を見つめたまま震えていた。

「シュウさん!しっかりしてください!」

私はシュウさんの肩を掴み揺らしたが、シュウ
さんはその場に座り込んでしまった。
ずっと見つめていた先には、私が付けたアロマキャンドルがあった。

「(もしかして・・・)シュウさん、火が・・・苦手なんですか?」

「・・・っ違う・・・俺は、俺は・・・」

頭を抱えたままガタガタと震えたままのシュウさんを私は見ていられなく、ベットに近づきキャンドルの火を消した。
黒い煙が立ち上がり嫌な香りがしたが、すぐにそれは部屋中に広がった甘い薔薇の香りでかき消された。
いまだに座り込んだままのシュウさんに近づき、そっと抱きしめた。

「大丈夫ですよ、もう火は見えません。消しましたから。」

何故、こんなことしたのか自分でも分からない。
いつも血を吸われるだけの存在で扱われ、この生活から抜け出したいとも思っていたのに・・・。
いつもと違うシュウさんを見ただけで、こんなにどうにかしてやりたいと思う私は、この人達と生活しているうちに段々と染まっていってしまったのかと思うくらい、シュウさんが愛しく感じた。

「ずっといますから、シュウさん。大丈夫ですよ?」

「違う、違うんだ・・・ずっとなんて、ありえない。俺に近づけば、いつかお前だって・・・」

何を言っているのか、私には分からなかった。
それでも、私が知らない過去に何か嫌なことがあったということだけは、シュウさんの怯えようから分かった。

「だから俺は、お前を近づけないように・・・餌のように扱ってた。
なのにお前は、こうやって俺に近づいて・・・。」

いつものシュウさんに戻ってきた彼は、私の腕を掴み、引き寄せた。
必然的に顔が近づき、顔が真っ赤になった。

「・・・血が、甘くなった。まだ吸ってもいないのにな。」

私にはわからないが、吸血鬼である彼には分かるらしい。
体内に流れる血の匂いを・・・。
シュウさんはアヤト君に噛まれた痕から流れている血を舐めた。

「甘っ・・・この薔薇の香りみたいに、あんたの血甘くなってる。」

「っ・・・シュウさんに、近づきたいと思ったから。こんな怯えたシュウさん見たことなかった。
だから、私が支えてあげたいって・・・過去に何があったのか分かりませんけど、私は知りたい。
シュウさんのこと、昔のこと・・・嫌な事は話さなくていいです。
ただ、傍にいたい。」

私はシュウさんの首にだきついた。

「この体勢、すごい血ぃ吸いやすいんだけど?吸われたいのか?あんた。」

「だったら?」

「・・・あんた、性格悪くなったな。」

呆れるように呟いたシュウさんは私を抱き上げ、ベットに近づき私を押し倒した。
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