DIABOLIK LOVERS Hidden Truth

□現状
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その日は学校で学力テストだった。
まぁ、本校の方が進み具合は早いから簡単だけど・・・
テストしかなかったから、いつもより早く学校は終わった。
珍しくリムジンで屋敷に帰宅した俺は、部屋に向かう前に白薔薇の咲き誇る庭へ向かった。
雲の波間から零れる月明かりで、雨に濡れた花弁がキラキラと光っていた。
昨日の夜、雨が降ったのか・・・
白薔薇を数本手に取り、手折る。
そのまま屋敷に戻り、俺は部屋に向かった。
部屋に入り花瓶に白薔薇を差した。
窓に目を向けると、バルコニーの手すりに使い魔が止まっていた。
俺は急いで窓を開けてバルコニーに出た。

『誰から?』

使い魔の足に括り付けられた手紙を取る。
それを見届けたかのように、使い魔は夜空に飛び立つ。
部屋に戻り、窓を閉めながら手紙の裏を見る。
そこには達筆な字で父さんの名前が記されていた。

『・・・父さん?なんだろう。次期当主の件はもう済んでるはず・・・』

ベットに腰掛け、俺は手紙の封を開けて中身を読んだ。
そこには魔界へシュウと一緒に来いと書かれていた。
こういう呼び出しの時は大抵嫌な予感しかしない。
父さんの退屈を紛らわす為のお遊びか、それとも本当に大事な用なのか・・・
とりあえず、早く行かないと催促が来そうだな。

『はぁ、なんでもないといいけど・・・』

俺は手紙をサイドテーブルに置いて部屋を出た。
隣の部屋に向かい、ドアをノックする。
だけど返事は帰ってこない。
あれ、確か先に帰ってたはずだけど・・・
そっとドアを開けて中に入れば、部屋の主はベットに横になり寝息を立てている。

『・・・シュウ。』

「ん・・・っ・・・」

ベットに近づき、そっと身体を揺らす。
片目を開けて俺を見たシュウは、大きな欠伸をして起き上がる。

「なに、ヨウ。寝てたんだけど・・・なんの用なわけ?くだらない用なら・・・」

『父さんから呼び出し。』

「・・・・・・・・はぁ、めんどくさい。」

シュウの言葉を遮って用件を伝えれば、呆れたような溜息をついて頭をかいた。
俺だってめんどくさいよ。またあの城に行かなきゃいけないと思うと憂鬱。
だけど、行かないと後々めんどくさい事になるのは確かだ。
俺達は屋敷から魔界へと向かった。

「呼び出してすまなかったね。ヨウ、シュウ。」

「なんなんだ。俺まで呼び出して・・・」

『父さん。それで、何か大事な連絡でも?』

魔界の父さんの城に着くと、あの時と同じように導かれるように門が開く。
長い廊下に明かりが灯る。あの時と違って蝋燭の火ではなくランプ。
きっとそれはシュウのトラウマを考慮してくれてるからだと思う。
部屋に通されれば、そこには本の整理をしている父さんがいた。

「二人を呼び出したのは他でもないよ。実はね・・・」

「『・・・・・・・』」

やっぱり父さんからの呼び出しは、大抵がめんどくさい内容だ。
大体の嫌な予感が当たる。今回に至っては大当たりだ。
父さんが言うには、最近何故かヴァンパイアばかりが殺されているらしい。
同族狩り等でも魔族同士の喧嘩でもない。だけどその有様は惨い。
だけど致命傷になっている傷は心臓への一撃。

「身体を貫通しているから詳しくは分からないが、恐らく銀で殺られた可能性が高い。
多数起きている事件だが、共通する事はただ一つ・・・全員、銀で心臓を一撃で絶命しているのだよ。
この意味が、分かるね?」

「・・・その犯人を探せって事か?めんどくさい事したくないんだけど?」

『下手したらそれ、こっちも死ぬよね?』

銀・・・それは俺達ヴァンパイアの唯一の弱点。
人間達が作り出して思い込んでるヴァンパイア像では、ニンニクと十字架、日光が弱点。
だけどそんなのは迷信だ。勝手にそう思い込んでいるだけ・・・
でも、銀に至っては本当だ。それで傷つけられた傷は治りが遅い。
心臓なんてやられたら、一巻の終わりだ。
その犯人を探せ?まして捕まえろなんて言われたら、こっちが死ぬ可能性が高くなる。

「探せ?いや、私が頼みたいのはそんな簡単なのじゃないよ・・・」

『?じゃあ、一体なに・・・』

「殺してくれるかな?」

父さんの言った言葉に、俺とシュウの思考は止まった。
今、この人はなんて言った?殺せ?俺達に、その犯人を殺せって?
俺はただ父さんを見つめ返す。

「・・・出来るね?ヨウ。」

『っ・・・・・・・・は、い。』

ただ、返事をするしか出来なかった。
否定の言葉なんて出来ない程、圧をかけられた気がした。
父さんは俺の返事を聞くと嘘で貼り付けた笑顔を向ける。

「よろしい。呼び出してすまなかったね。用事はそれだけだよ。」

「・・・ヨウ、帰るぞ。」

『っ・・・』

何の返事も出来ない俺に、シュウは手を引いて俺を部屋から連れ出した。
そのままどうやって屋敷を出たのか記憶がない。
いつの間にか屋敷の門を通っていた。

「ヨウ・・・ヨウ!」

『っ!?・・・ぁ、シュウ・・・』

「・・・ヨウは手を出さなくていい。俺達でやればいいだろ。誰も一人でやれとは言ってない。」

声をかけられ、ハッとした。
シュウは俺の様子を伺い、"俺達"でやると言った。
きっと、弟達の事だと思う。
俺に負担をかけないように、俺が血を見ないようにしてくれてる。
だけどね?きっとあれは、父さんが俺を試そうとしているんだよ。
だから俺が逃げる訳にはいかないんだ。

『大丈夫。もう逃げない。行こう、シュウ。』

「・・・一度決めたら、言うこと聞かないね?ほんと、めんどくさい。」

『ははっ、めんどくさくてごめんね?』

そう言いながら、屋敷へと戻る。
屋敷に戻ると、全員がリビングに集まっていた。
俺達が魔界へ行っている間に、父さんの使い魔から連絡があったらしい。
父さんからの伝言を伝えろって事か・・・
使い魔に直接言えばいいのに、俺達を使い魔代わりにしたんだね。
ほんとめんどくさい事してくれたよ。あの人は・・・
シュウも呆れたように溜息をついていた。
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