DIABOLIK LOVERS The chain of fate and blood

□エピローグ
1ページ/1ページ






俺はその日、黒いマントに身を包み魔界へ続く道を歩いていた。
逆巻の屋敷からは、直接魔界に繋がる道が存在する。
まぁ、父さんがめんどくさがって自分の屋敷と行き来出来るように繋いだんだろうけどね。

『ここは変わらないな・・・昔から何一つ、変わってない。』

道を抜ければ、魔界の空と景色、空気が目の前に現れる。
人間界と違って空気が澄んでるし、身体が軽く感じる。
それに力も、あっちにいる時より強くなっている気がする。

『・・・行こうか。』

魔界の地を踏みしめ、待ち構えるように立っている屋敷の前に俺は立った。
門を開こうと手を伸ばすが、招き入れるように門が音を立てて勝手に開く。
生唾を飲み込み、門を潜る。ここはあの人の古城だ。
玄関の扉も勝手に開き、導かれるように廊下にある蝋燭に火が灯っていく。
歩いて行けば、廊下の一番奥の扉が開く音がした。

「そろそろ来るのではないかと思っていたよ、ヨウ。」

『父さん。お久しぶりです。』

扉の先には、まるで書庫のように本棚が並ぶ部屋がある。
そこに本を読みながら椅子に座っている父さんがいた。
革靴の音を響かせ、父さん目の前に立つ。
本を閉じた父さんが、俺を見据える。

「・・・さて、お前から出向いてくるとは珍しい。用件は何かな?」

『次期当主の件で、お話があります。』

そう切り返せば、父さんは上辺の笑顔から冷たい目に変わる。
俺を見る目が怖い。だけど決めたんだ。もう逃げないって・・・

「次期当主・・・それはシュウのはずではなかったかな?何故、今になって・・・」

『シュウには継がせない。俺がこの屋敷を、逆巻を継ぐ。長男として、あんたの後を継いでやる。
元々のあんたの願いはシュウじゃなく、俺が継ぐべき未来だったはずだ。
俺が撒いた種は自分で花を咲かせる。それを弟に尻拭いはさせたくない。』

父さんを真っ直ぐに見つめ、自分の考えを貫く。
どうせ分かってたんでしょ?俺が来るって、俺が自分から継ぐって言い出すって・・・
結局、俺はあなたには勝てない。あなたの掌で転がされてるだけだ。
俺の性格を知ってるくせに、本当にあなたはお遊びが好きな人だ。

「なるほど。確かに、私としては一番私の力を継いでいるヨウに、次の魔王の座に就いてほしいと思っているよ。
だけど、克服はできたのかな?ヴァンパイアとしての威厳が、必要なんだよ?力だけでは、魔界の連中は纏められない。」

『っ!?・・・は、ぁ・・・あっ・・・』

父さんが、引き出しから取り出した物に思考が過去に戻される。
出されたのは赤いハンカチ。あぁ、あの時とまるで同じじゃないか。
身体が無意識に震えだし、その震えを抑えようと自分の身体を抱きしめる。

「・・・まだ、克服出来ていないようだね。そんなのでは次期当主には・・・」

『なれないってのは、知ってる・・・っ・・・自分が、一番分かってる。
だけど、いつか克服するから・・・今はシュウが継ぐって事にしておいくれてればいい。
でももし、俺が克服出来た時は、俺が継ぐ。シュウには継がせない。
弟だけは、あんたに、逆巻の名に、この屋敷に・・・縛らせたくない。』

冷や汗が流れる中、服の上から自分の肌に爪を立てる。
痛みでどうにか、意識を繋いだ。父さんを見つめて自分の考えを言った。
今はシュウが継ぐって事に、他の家系にも知られている。
それはもう変えられない事実だ。
だったら今はそのままでいい。だけどもし、俺にその時がきたら・・・


ーーー俺があなたの後を、次期当主に就いてやる。


ほら、あなたが思い描いていた結末でしょ?
本当はシュウじゃなく、俺に継がせたかったんでしょ?
思い通りになったじゃないか。

「・・・なるほど。それがヨウの考えだね。」

『はっ、はぁ・・・そう、だよ。だから、お願いだから・・・シュウには、継がせないで。
俺のせいでずっと縛ってきたんだ。もう、自由にしてあげて・・・っ・・・俺が継ぐから!お願い、父さん・・・っ・・・』

呼吸を整えて、願いを請うように頭を下げた。
服を握り締めて、ただ父さんの言葉だけを待った。
なんて返ってくるか、なんて言われるか、不安しかなかった。
だけど返ってきた言葉に俺は目を丸くした。

「ふむ。構わないよ。」

『・・・・・・えっ?』

顔を上げれば、引き出しに赤いハンカチをしまい椅子から立ち上がった。
読んでいた本を本棚に戻し、俺に向き直る。

「それがヨウの願いなのだろう?寧ろ私も、そろそろ次期当主候補をヨウに戻そうとしていた所だった。
それはきっと、ヨウがあの子に出会って変わったからかな?」

『・・・うん。そうだね。あの子のおかげで、俺は救われたよ。弟達もいたから、俺は答えを出せた。』

「・・・いいだろう。では、次期当主の第一候補はヨウという事にしておこう。
ただし、今はまだ、シュウがその役目を名だけ背負ってもらう。いいね?」

そう釘を刺されるように言われた。
それは俺もシュウも考えていたことだから、納得して頷いた。
俺の様子を見て、また嘘くさい笑顔に戻った父さんがそこにはいた。

「用件はそれだけかい?この後客人が来る予定だから、戻ってくれるかな?」

『・・・ありがとう。父さん。』

俺は頭を軽く下げて、マントを翻して部屋を出た。
扉が勝手に閉まり、また暗い廊下に蝋燭の火が順に灯っていく。
長い廊下を歩いて玄関を抜け、城の門を潜った。
城の重苦しい空気から、やっと解放された気がした。
父さんの前はやっぱり緊張する。震える身体を抑え、息を整えた。
ふと視線を感じて目を向ければ、そこには空に伸びるようにして立つ塔があった。

『・・・あの人は・・・』

そこの最上階に、白い影が俺を見ていた。
俺の視線に気づいたのか、影は奥へと隠れるように逃げて行く。
あぁ、そういえばあそこにいたのか・・・あの人は・・・

『手ぶらで帰るのも、あれだよね・・・久しぶりに、話をしてみるか・・・』

逆巻の屋敷に帰る道ではなく、塔へと続く道を歩く。
スバルにお土産話でも持って帰ろうか。
今日は多分、あの気配と視線から暴れないと思うし・・・久しぶりに話してみたかった。
元気にしてるかな。
ねぇ、クリスタ様・・・あなたのスバルは、心優しい子に育ってますよ。
そう思いながら、塔の中にある階段を登る。
最上階にある扉を開けば、白薔薇の明るさがそこにはあった。
まだ、スバルの"白薔薇"は枯れてない。







「ふっ、大きく成長したものだ。これからが楽しみだよ。」

「・・・あれが"ティファレト"ですか?」

「俺さぁ、一回会ったけどそんな特別な感じしなかったよ?」

「本当にあいつなのかよ、カールハインツ様。」

「あの人が・・・ふふっ、楽しみだねぇ・・・」



ーーー私の、アダムの林檎計画の"鍵"は・・・









〜To be continued…?〜

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ