DIABOLIK LOVERS The chain of fate and blood

□限界
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その日は俺の初登校の日だった。
父さんから手続きが終わったと連絡があり、不安を抱えながらも皆と同じリムジンに乗り登校した。
行ってみれば不安なんていつの間にか消えていた。
クラスはシュウと同じ。その時は珍しく教室にシュウがいた。
教室に入った途端にざわついた感覚を俺は忘れない。
シュウと違って愛想良くはしてたからすぐに周りに溶け込めた。

『はぁ、楽しかったぁ・・・』

今は自分の自室で寛いでいた。
久しぶりの学校は楽しくて、シュウを連れ回しちゃったけど、本気で嫌がってなかったから大丈夫かな?
でも本校の方が授業内容は進んでいた。
だから授業中はその話を聞き流していただけだ。

『・・・そろそろ、満月か・・・』

バルコニーに繋がる窓を開け放ち、夜空を見上げる。
もうすぐ満月になる大きな月が浮かんでいる。
恐らく、後一週間程で俺達ヴァンパイアの吸血衝動も高くなるだろう。
ユイちゃんを守らないとなぁ・・・

『ほんと、俺の弟達は血の気が多くて困るよ。少しはユイちゃんを労ってほしいんだけどなぁ・・・』

そう呟き、部屋に戻った。
満月の日は、血の吸えない俺でも吸血衝動は高まってしまう。
ヴァンパイアは月に作用されやすい生き物だ。
俺も満月が近づけば、喉が渇いて仕方なくなる。

『んっ・・・はーっ・・・』

花瓶に常に挿してある白薔薇を手に取り、口付けを落とす。
軽く息を吸い込むようにすると、みるみるうちに白薔薇は萎れ枯れていく。
手から落ちた白薔薇は、開け放たれた窓から吹く風に舞い外へと散っていく。
だけどその日は、少しだけ違った。

『っ・・・』

いつもなら、満月の日が近くても一輪だけから生気を貰っただけで満たされていた。
だけど今日は違う。一輪だけじゃ足りない。
二輪、三輪と白薔薇の生気を吸い取っても、満たされなかった。
寧ろ余計に渇くほど・・・

『なに、これ・・・俺の身体、どうしたの?』

我慢できるくらいだったから、三輪の白薔薇から生気を貰って俺はベットに横になった。
自分の身体が、まるで自分のものじゃないみたいだ。
生気じゃ足りなくて、"血"を欲してしまいそうな程。

『っ・・・くそ・・・』

そんな思考を消すために、無理矢理にでも目を閉じて眠る事にした。
自分の思い過ごしてあるように、久しぶりの学校で舞い上がって、ただ興奮していただけだと思いながら・・・
だけど、それは翌日になっても続いた。
こんな状態で学校なんかに行ったら何をするか分からない。
俺は部屋まで呼びにきたレイジに具合が悪いと言って休んだ。
初登校の次の日にいきなり休みたくはなかったが、ヴァンパイアだってバレるよりはいい。
自分の部屋で暫く篭り、我慢出来なくなって部屋を出た。

『はぁ、はぁ・・・っ・・・み、ず・・・』

喉の渇きを抑えようと、キッチンへ身体を引きずって向かった。
雪崩れ込むようにキッチンに入ると、コップに水を並々まで入れて飲み干した。
飲んでる時は渇きが癒されていたけど、飲み干してしまえばまた急激に酷い渇きが襲う。

『なんなんだよ、これっ・・・はぁ、うっ、ぁ・・・はぁ・・・』

いつもの落ち着きが取れない。
ムシャクシャして、少々乱暴にコップを置いてしまった。
割れてなければいいけど。後でレイジが怒りそうだし・・・
俺は喉を抑え、庭へと足を向かわせる。
やっぱり水より薔薇の方が満たされる気がした。

『はっ、はぁ・・・はぁ、はぁ・・・』

どうやって庭まで行ったのか覚えてない。
ただ喉の渇きを早く癒したかった。
俺が気付いた時には、足元には何十本もの白薔薇が枯れ果てた姿で散っていた。
やっかいな事に、記憶がない。
こんなになるまでは初めてで、俺自身もどうしていいか分からなかった。

『どうして、俺・・・・・・・・でも、満たされた。』

あんなに辛かった喉の渇きが癒えていた。
ほっとしたのもあるけど、どうしてこうなってしまったのかという不安が心の中を支配した。
地面に散った白薔薇を見つめながら、ふいに感じた気配の元へ走る。
向かうは玄関。ドアを開ければそこには、俺の大事な弟達とユイちゃんがいる。

『おかえり!』

この事は黙ってよう。変に心配をかけたくはない。
レイジに体調を心配されたけど、いつもの笑顔で大丈夫と言った。
だけどシュウの視線が痛かったなぁ。きっと何かしら気づいてそう。
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