リクエストの空間A

□パンドラの箱
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「……で?条件を出して俺とシてた理由の言い訳は?」

ルキが目を覚ましたのはそれから数時間後だった。
何か言われるかと思ったが、俺の顔を見たルキは視線を逸らしそっぽを向いた。
俺はそんなルキを見ながら口を開いた。
今までの関係性を、終わらせる為に……

「ッ、それは……前からシなかったのはお前の目が、見えるからだ……」

思いがけない答えに俺は唖然とした。
まさか目が見えるから前からシなかったとは思わなかった。
ルキが嘘を吐く訳がないのは分かってる。
だからこれも本当なんだろうが……可愛すぎ……

「お前の目を見ると、全てを見透かされそうで……その綺麗なサファイアブルーの瞳が、俺の知らない場所まで暴きそうで、怖かった。」

ルキは俺から目を背けながら理由を話した。
俺からしたら、ルキの漆黒の瞳の方が俺の全てを飲み込みそうで怖いけどな。
だから俺も、顔が見たいと思いながらもその条件を飲んだんだと思う。
観念したように話すルキの髪を指で遊びながら聞いていると、ルキの手が徐ろに俺の頬に触れた。

「それに、お前に見つめられると動けなくなる。」

「……ふぅん。じゃあ喋るなって言うのは?」

伸ばされた手に自分の手を重ねた。
まだ身体から余韻が抜けていないのか、少し震えていた。
恥ずかしそうに言うルキの頬にキスをして、もう1つの疑問をぶつけた。
前からシなかった理由は分かった。
ルキがイったら終わりなのも、シていて分かった。
でも喋るな、名前を呼ぶなの条件の理由が分からない。
俺の問いにルキは目を泳がせながらも、口を開く。

「お前の、声が……心地いいから、だ。」

「……は?それだけ?」

「ッ悪いか……お前の声で名前を呼ばれたら、おかしくなる。俺が俺じゃなくなってもいいのかと思ってしまう。」

自分でも間抜けな声が出たと思う。
俺の声が心地いいって、好きって事でいいんだよな?
ルキの出した条件の理由の殆どが俺を好きと物語っていた。
それでもきっと、こいつは認めないんだろう。
まぁ、それでもいい。やっと理由が聞けたからな。
そうなると残りの条件の理由も自ずと分かる。

「じゃあ、キスをするなって理由も……」

「ッん……ん、ぅ……」

ルキの唇にキスを落とす。
あの時は俺も切羽詰まっててちゃんと味わえなかったからな。
唇の柔らかい感触を楽しむように啄ばみ、段々と深くキスをしていく。
噛み切られるかなと思いながらも舌を差し込めば、意外にもされるがままだった。
歯列をなぞり、牙を舌先で撫でればビクビクと身体を震わせる。
唾液を流し込み舌を絡めれば、ルキの手がおずおずと俺の服を掴む。
そっと目を開ければ、目を閉じて気持ち良さそうな顔でキスに溺れていた。
目を開けなきゃ良かったと後悔した。
またシたくなって、止まらない。

「はぁ……気持ちよくて、自分が自分じゃなくなるから?こんな蕩けた顔しちゃってさ?」

「ふ、ぁ……はッ、ぁ……」

唇を離せば、キスで蕩け切った顔が視界に入った。
瞳は生理的な涙を浮かべ、頬は高揚に染まり、唇は濡れ、その端からは飲み切れない唾液が伝う。
その表情だけで、ゾクゾクと俺の背筋に快感が走った。
キスの余韻に浸るルキを愛しく思いながら、力の抜け切った脚を持ち上げる。
後孔は未だヒクヒク動いて、俺を誘ってるみたいだった。
緩くなったそこからは奥に流し込んだ俺の精液が溢れ出し、綺麗にしたばかりの肌やシーツを厭らしく濡らす。
生唾を飲み込み昂った自身を押し付ければ、ルキははっとして俺の方に手を伸ばす。

「ッもういい、するな……これ以上は無、ッあぁ!?」

「はッ、キツ……それにさ、もう声抑える気ないくせに何言ってるわけ?今迄の分、付き合え。」

制止の声を俺が聞くと思うわけ?
押し当てただけで俺の飲み込もうとしてるくせに……
ぐっと腰を進めればそこは簡単に俺のを飲み込んで締め付ける。
回数重ねる度にヨくなるとか、魔性だな。
それに、挿れただけで腰を跳ねさせ瞳に声を上げる。

「ッはぁ、はぁ……たく、仕方のない男だ……」

ルキは息を整えながら、俺の首に腕を回す。
軽く俺の耳朶に唇を落とし、掠れた声で囁いた。
これじゃあ、どっちが惚れてるか分かったもんじゃない。
囁かれた言葉だけで、表情や反応だけで俺の理性を壊せるのは、あんただけみたいだ。

「望む所だ……俺のパンドラを開けたんだ。最後までシろ。お前はもう、俺のなのだろう?」

その言葉そっくりそのまま返す。
あんたが、俺のものなんだ。
きっと、最初に出会った時から囚われていたんだろうな。
俺の動きに合わせて声を上げるこいつに……
これからは身体だけの関係じゃない。新しい関係で進んでいく。
こいつを包み隠していたベールを捲り、開いたパンドラの箱の中にあったのは禁断の果実。
食べてはいけない、捥ぎ取ってはいけないもの。
淫靡で甘美な甘い果実は、食べた者を虜にする。
俺の下で猥らに躍り狂う姿は、綺麗で美しく愛らしい存在。

ほんと、危険なパンドラの箱だな。




END
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