リクエストの空間A

□パンドラの箱
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「ッ、はぁ……ぁ、はぁ……」

夜の図書室に荒い息だけが木霊する。
俺の眼下には、窓に手を付いて俺に揺さぶられているルキがいた。
目線を更に下にズラせば、卑猥な光景が目に飛び込んでくる。
ズボンや下着は足首まで下がり、ルキのそこは厭らしく俺の欲を咥え込んでいた。
腰を掴み、ゆっくりと引き抜いていけば俺のを離したくないのかきゅっと締め付けてくる。
そして、またゆっくりと奥まで突き挿れればルキのナカはビクビクと収縮を繰り返す。

「んッ、はぁ……ッ、早く、終わらせろ……ッ……」

もどかしくなったのか、ルキは吐息混じりに声を出した。
後ろだから顔は見えないか……
本当なら見たいんだけどな。あんたの善がってる全てをな。
ぐっと奥まで挿れればルキは息を詰めて身体を逸らした。
窓に付いてる手に力が入り、キィッと窓ガラスを引っ掻く。
こいつは今、どんな顔してるんだろうなぁ。
俺とこういう関係になって、一度もルキの喘いだ声を聞いた事がない。
いつも吐息や息を詰める音だけが響く。
本当に快楽に善がった声は、そそるんだろうな。

「ルキ……」

後ろから抱きしめ、名前を呟く。
だが、呟いてから俺はハッとした。
ルキとの関係での"約束"を破ったからだ。

「ッ、抜け……」

「……まだ終わってない。」

「抜けッ!」

ルキに強く言われ、俺はゆっくり自身を引き抜いた。
まだ俺イってないんだけど……多分ルキもイってないだろう。
手早く服を直したルキは俺を鋭い眼光で睨み付けた。

「二度と俺に近づくな。」

そう言い放ち、ルキは覚束ない足取りで図書室を出て行く。
後ろ姿を見ながら、俺は舌舐めずりをした。
二度と近づくな、ねぇ?二度とヤるな、じゃないんだな。
ふとルキの居た場所に目を向ければ、さっきまでルキが読んでいた本があった。
よく見ればそれはルキがいつも持ち歩いている本。
そして、視線を下に向けた俺は思わず口角を上げた。

「なんだ、あんたイってたんだな。」

壁にはドロリと白濁の液体が伝っていた。
それを指で掬い取り、躊躇する事なくその指を口に含む。
……あいつの味、こんななんだな。
フェラとかした事ないし……いや、させてもらえないが正しいか……

「……はぁ、どうしてくれるわけ?」

誰もいなくなった図書室で、俺は月が浮かぶ夜空を見上げながら呟いた。
もう少しで満月になるそれだけが、俺の独り言を聞いている。
途中で中途半端に行為をやめたせいか、俺の自身は欲を吐き出せずにいた。
軽く舌打ちをしながら、いまだ熱を持つそれに指を絡める。

「ッ、は……」

ルキとこういう関係になってから数ヶ月経つ。
最初は月蝕の時の気の迷いだ。
自分でも馬鹿な事を持ち掛けたと思う。
でも、それ以上にルキがそれを了承した事に驚いた。


『あんたの身体、興味ある。普段すましてるあんたが、どう善がって啼くのか……』

『……意外だな。逆巻シュウに男色の気があったとは……』

『別に。ただの興味本位なだけだ。で?どうすんの?』

『……お前がそうしたいなら、構わない。ただし、条件がある。』


ルキに出された俺への条件は、複数あった。
前からシない。キスをしない。名前を呼ばない。喋らない。
これをもし行為中にしたら、その場で行為自体を止める。
だが、それとは別にもう一つ……ルキがイけば、行為は終わりと言うのもあった。
俺としてはあんたがどんな顔で啼くのか見たかったが、この条件を飲まなければ了承しないと言われた。
仕方なくルキの提示した条件を飲む代わりに、俺からも一つだけ条件を出した。
ゴム無しで、ナカ出しを許可する事。
ルキは最初渋ってたが、二つ返事で了承した。
それが、始まりだった。身体だけの関係だった。
それなのに俺は……

「はぁ、ッ……ル、キ……」

いつからか、それだけじゃ物足りなくなった。
あいつの顔を見たい。善がり啼く声が聞きたい。
どうして俺との関係を了承したのか、聞いてみたい。
ルキとの身体の相性は悪くないはずだ。
いや、寧ろ最高すぎる程に合いすぎてる。

「ッ……!」

ビクビクと脈打つ自身から、溜まっていた欲が噴き出す。
それはルキのナカに収まるはずだったもの。
壁に垂れてるルキの残滓に、俺のをかけた。
ドロッと全てを覆い尽くすように、ルキの残滓を飲み込んでいく。

「はぁ、はぁ……ッ、あんたは、どんな顔で、声で啼くんだろうな。」

ルキが図書室を出て行く前に残した言葉が、頭を過ぎった。
『二度と俺に近づくな。』
その時のルキの表情は、そそるものだった。
漆黒の瞳は潤み、色白の肌は赤みを帯び、その唇は厭らしく濡れていた。
それに、瞳と同じ色の髪に月明かりが反射して綺麗だと思った。

「……」

明日は、満月。
ヴァンパイアの力が一番強くなり、制御を効かせるのが難しくなる日だ。
俺は夜空に浮かぶ月を見上げ、口角を上げた。
二度と近づくなって言ってるくせに、二度と身体を重ねるなとは言わないんだな。
なら"行為"目的で近づく分には、いいんだよな?
今度はナニをシてやろうかと考えながら、後片付けを使い魔に任せて俺は帰路についた。

開けてはいけないパンドラの箱を目の前にしている気分だ。
だけど、してはいけないと言われたら、開けてみたくなるだろう?
あんたが隠してる、あんたも知らない本性と言う名のパンドラの箱。

……俺が、開けてやる。
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