リクエストの空間A

□僕だけを見て
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誰か一人を見ることなんて、俺には出来ない。
だって、俺にとったら全員が大好きだから・・・
一人一人が、大切な家族で、弟。
だから、選べない。
自分の物にしたいってその気持ち、少なくとも共感するよ?
特に、昔の事があるから欲しがるんだよね。
自分にだけ向けられる"愛"を・・・

『シュウ、ほら起きて?』

「んー・・・めんどくさい。眠い。だるい。」

『そんな事言わないの・・・確か今日、父さんに呼び出されてたでしょ?今度開くパーティーの件で・・・』

俺の横で寝てるシュウの身体を揺らして起こす。
だけどシュウは動かず、また寝ようとする。
でも今日は確か父さんに呼び出されていた日のはずだ。
まだ魔界にはシュウが逆巻の長男となっている。
だから何かと役割が回ってきて、月に何度か父さんから直々に呼び出しがくる。
それが今日だった。

「・・・はぁ・・・」

父さんからの呼び出しを言えば、シュウは目を開ける。
めんどくさそうに頭をかいて起き上がるシュウ。
軽く欠伸をして時計を見つめる。

『支度、しなくていいの?』

「めんどくさい。このまま行く。」

適当に服を整えたシュウは、そのまま部屋を後にする。
シュウを魔界に見送る為、同じように部屋を出た。
魔界とは屋敷と繋がっている為、簡単に行き来が出来るようになっている。

『じゃあシュウ、気をつけてね?』

「ん・・・多分、明日には帰る。」

『うん。レアステーキでも用意しておくよ。だから父さんや魔界の人達の機嫌損ねさせないでよ?』

そう言って俺はシュウを魔界へと見送った。
明日の夕方近くには戻ってくるかな?
レイジに料理頼んでもいいけど、恐らく疲れて帰ってくるシュウの事だし・・・
俺が作った方がいいかなぁ。シュウ好みの焼き加減なら俺の方が知ってるしね。
そうしようと思い、自分の部屋に足を向かわせる。

「んふ。ヨーウ兄?」

『あれ、ライト?どうかした?』

「んー?ちょっとね・・・ヨウ兄に聞きたい事があってさぁ・・・」

自分の部屋に戻ると、部屋の前にライトがいた。
どうしたのか聞くといつになく真剣な眼差しを俺に向けた。
何か言いにくい事なのかな?それか、何かあったとか?

「ヨウ兄ってさ、シュウの事すっごい好きだよね?」

『え?すっごいって言うか、シュウの事は好きだよ?双子だし、俺の弟だから・・・』

何を聞きたいのかと思えば、予想の斜め上の質問にビックリした。
少し拍子抜けしたけど、ライトの質問にはちゃんと答えたつもりだ。
シュウは俺と血も力も分けた存在だし、一番俺の事を分かってくれてる。
弟としても気に入ってるし、自分の弟なんだから好きじゃない訳が無い。
だけどそんな俺の答えに、ライトはどこか悲しげな表情をした。

「・・・そっかぁ。じゃあさ、僕の事は?」

『ライト?勿論好きだよ?弟だし、家族なんだから。』

「そう。家族で、弟だから好きなんだ・・・」

ライトの声が、低くなった。
何か、ライトに気に触る事でも言っちゃったかな。
とりあえず、廊下で立ち話もあれだし、部屋の中で話そうとした。

『ライト。とりあえず中入ろうか、ゆっくり話そうよ。ほら、ライ・・・っ!?』

部屋の扉を開ければ、不意に口元に布が当てられた。
何か液体が染み込んでいるのか、息を吸い込んだ瞬間にくらっと頭が揺れる。
白薔薇とまた違う甘い香り。だけど意識を深い闇に持って行かれるような、そんな感覚。
抵抗なんて無いに等しいまま、俺の思考は堕ちていった。
遠退く意識の中、微かに聞こえたライトの楽しそうな・・・どこか悲しい声。


ーーーんふ。ヨウ兄、僕とイイ事して遊ぼうか・・・
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