DIABOLIK LOVERS The chain of fate and blood

□決着
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シュウは本当に優しい弟だ。
俺の気持ちを分かってくれるし、周りの様子をよく見てる。
その言葉に、優しさに、俺がどれだけ救われてるか・・・

「・・・ねぇ、ヨウ兄・・・喉が渇いた。」

『ん?あぁ、今日の勉強内容、結構頭使う内容だったから疲れたね。ほら、いいよ?』

俺を見つめて言うシュウの目は、血を欲する怪しい目をしていた。
シュウから聞いた今日一日の勉強は俺でも理解するのが難しかった。
俺に覆い被さるシュウに、俺は自分の服の前を開けて肌を晒した。
喉を上下に動かし、俺の首筋に口を寄せる。

「ヨウ兄・・・はー、んっ・・・ん・・・」

『っ・・・いっ、シュウ・・・んっ、はぁ・・・』

首筋に刺さるシュウの牙。一気に溢れる血の匂い。
自分の血の匂いなんて嫌だけど、目の前にあるシュウの首筋から香る血の匂いに我慢が出来ない。
そんな俺に気づいたのか、シュウが服を緩め自分の肩を曝け出す。

『はー、んぅ・・・んっ、っ・・・』

「っ、ん、んっ・・・」

お互いの首筋、肩に牙を埋め込んで吸血する。
同族の、まして弟の血を飲んでるのに、嫌じゃない。
俺にはシュウしかいない。シュウさえいれば、俺は生きていける。
牙を抜き、お互いの顔を見れば口端から血が垂れていた。
シュウの口端に垂れる血を舐め取れば、シュウも俺の口から垂れる血を舐め取る。

「『へへっ、美味しい!』」

お互い笑顔で言えば、そのまま満たされた微睡に任せて目を閉じる。
愛しい弟を抱きしめて眠れば、俺は明日の嫌な勉強の時間を頑張れるんだ。
それ以来、週に一回のペースで入れ替わっては遊んでいた。
その時が俺の一番楽しい時間になっていたから。
だって、爺も使用人も母さんも、俺達が入れ替わっている事に気がついていないんだ。

ずっと、こうやって遊んでいられると思ってた。
楽しい日々が続くと、俺は思ってたんだ。
その日も俺はシュウと入れ替わって、シュウは俺を、俺はシュウを演じていた。
何回もやってるうちに、服の着こなし方や表情、仕草、話し方に至るまで演じられるようになった。
だからその日も、うまくいくと、今まで通りに時間が過ぎていくと思った。
だけど・・・

『あはは、擽ったいよ!ごめんね、今日はご飯持ってないんだ。今度必ず持ってくるよ!』

今日も俺はシュウに教えてもらった湖畔に来ていた。
そこにいけば動物達が自然と集まってくる。
座ればウサギ達が俺の膝の上に乗って、指を舐めてくる。
ここに来る時はいつも動物達のエサを持ってきていた。
だけど今日はタイミングが悪くて、キッチンから盗んでくることができなかった。

『ちょっ、なんだよ!あははっ、仕方ないなぁ・・・そんなに欲しいのか?待ってて、取りに行ってくるから!』

ウサギ達はお腹が空いてるのか、俺の手を舐めるのをやめない。
小鳥達も肩や頭に乗り鳴く。
俺は膝の上に乗るウサギを降ろし、軽く頭を撫でて背伸びをする。
そろそろシュウの勉強時間が終わるから様子見に行かないとな・・・

『っ・・・なんだ?この嫌な気配・・・』

だけどその時、木々が急にざわめき動物達は踵を翻して森の中に消えた。
動物達にも分かる程の嫌な気配が感じられる。
目を閉じてその気配の中心を探った。
そして、場所が分かった時、俺は血の気が引いた。

『っ・・・シュウ!』

その身体が震える程の嫌な気配は、全て屋敷に集中していた。
俺はすぐに森を抜けて屋敷へと駆け出した。
シュウはまだ力が弱い。知識だけは俺と同等までになってるけど、次期当主になれる程の力はない。
森を抜けて屋敷へと近づけば、どんどんと強くなる嫌な気配。
下級魔族が逆巻の屋敷を取り囲んでいた。

『邪魔だ!退け!』

俺に気づいたのか、下級魔族達は一斉に俺に襲い掛かる。
手を振れば魔族達は聞くに絶えない奇声を発して燃える。
残骸に目も暮れず、シュウがいるはずの部屋に向かった。
なぜ逆巻の屋敷を襲うかなんて俺には分からなかった。
だけど、予想は父さんに関係する何かじゃないかと思う。
俺は父さんが何をしているのか、詳しくは知らない。
でも、何かを企んでいる気がするんだ。

「きゃぁああああああ!ヨウ、ヨウ!!」

「ヨウ様!しっかりなさってください!ベアトリクス様も、お気を確かに!」

部屋の前に着いた途端に聞こえる母さんの悲鳴。
悲痛な声で俺の名前を呼び続けていた。
嫌な予感しかしなかった。こういう予感は、嫌でも当たる。
そんな考えを頭から消し去り、俺は扉を開けた。

「シュウ様、ご無事でしたか!ヨウ様が大変なのですよ!」

「シュウ!よかった、あなただけでも無事で・・・シュウ、ヨウは助かるわ。だから、気をしっかり・・・・・・シュウ?」

なんで、当たるんだよ。
こんな時になんで神様は、俺の願いを叶えてくれないの?
扉を開ければ、母さんが"シュウ"と呼んで俺を抱きしめる。
違う。違うんだ。母さん、俺は"シュウ"じゃない。"ヨウ"だよ?
俺はこんな嘘偽りの愛情はいらない。俺の名前を呼んで、呼んでよ母さん。
なんで、俺達を産んだあんたが、実の息子を間違えるんだ。
気付いて欲しかった。
シュウだけじゃなく、当主としての俺じゃなく、ちゃんと"息子"として俺達を見て欲しかっただけなのに・・・

『・・・・・・・』

俺は母さんの腕から抜け出し、シュウに近づいた。
綺麗な肌と、綺麗な金色に輝く髪は、汚れている。
それだけじゃない。服も、床も、綺麗で愛おしい俺の弟を・・・


ーーー"真っ赤な血"が、濡らしていた。


「・・・は、はぁ・・・ョ、ウ・・・に、ぃ・・・」

『シュ、ゥ・・・シュウ、シュウ!!』

もう、入れ替わりがどうとかなんて頭になかった。
息も絶え絶えなのに、シュウは必死に俺に手を伸ばした。
シュウの名前を呼び続け、伸ばされた手を握る。
傷口を見れば、腰から左胸にかけて鋭く深い切り傷が出来ていた。

「シュウ、あなた何を言っているの?あなたはシュウじゃ・・・」

「ベアトリクス様!お下がりください!」

「っ!?」
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