DIABOLIK LOVERS The chain of fate and blood

□決着
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『・・・爺。俺、遊びに行きたい。』

「いけません。お時間まではしっかりお勉強なさってください。後三十分程で自由時間ですよ。」

逆巻の長男として、部屋に篭って爺から勉強を受けていた。
経済学、経営学、他国語学・・・当主を継ぐのに、必要な知識を叩き込まれた。
書庫にある父さんが集めた本は半分まで読み終わり、記憶してある。
それに、自由時間と言っても、次の勉強に移る前のほんの数十分の時間。
俺は勉強で部屋に篭ってるけど、弟のシュウは外で遊んでる。
母さんから、愛情を受けてる・・・
だけど俺はシュウを憎んだりしてない。
だって、それは・・・

「はい、ヨウ様?お疲れ様です。今日の経済学のお勉強は終わりです。
爺は次の他国語学の教材の準備がありますので、爺が来るまで遊んでていいですぞ。」

爺はそう言って、俺に頭を下げて部屋を出て行った。
窓から外を眺めて、ドアが開く時を待っていた。
暫く経つと、ノックなしでドアが開かれる。
俺の部屋をノックなしで入れるのはただ一人・・・

「ヨウ兄、勉強終わった?」

『とりあえずは・・・シュウ、今日はどこに遊びに行ってたの?』

「そっか。えっと、今日はね・・・」

俺にはない自由をシュウは持ってる。
俺に向けてくれない、母さんの愛情をシュウは受けてる。
ないものを全てシュウは持ってるけど、憎んでない。
だって、こうやって勉強が終わった頃に来てくれるから寂しくない。
いつも何して遊んでるか教えてくれるんだ。
それだけで俺はシュウと一緒に遊んでる感じがして、嬉しい。

「それでね、森の中で遊んでたら湖見つけたんだ!そこにいっぱい動物いるんだよ!」

『へぇ、俺も行ってみたいなぁ・・・・・・ねぇ、シュウ?』

俺は、諦め半分でシュウに提案を持ちかけた。
本当は、勉強なんて嫌だ。遊びたいんだ。
本ばかりがあるつまらないこの閉鎖された空間から、自由のある外へ出たい。
だから俺はシュウに言った。

『俺と、入れ替わってみない?』

「え?入れ替わるって、どうやって?」

俺とシュウは双子だ。
前髪の分け目が違うだけで他は瓜二つ。
そこだけ変えてしまえば、使用人や爺、母さんにもバレないと思った。
一度だけ、試してみたかった。
だけど心の奥底に、逃げ出したいって言うのがあったのかもしれない。
でもシュウは優しい子だから、俺の提案にも笑顔で頷く。

「面白そう!いいよ!」

『え、本当にいいの?だって、一日部屋に閉じ籠ってひたすら勉強するんだよ?』

罪悪感があった。
いくら自分の我儘だからって、それを大事な弟に押し付けて自分は外で遊ぶのはどうかとも思った。
だけどシュウは、そんな俺の心を見透かしているのか、確信を突いてきた。

「だって、ヨウ兄だって外で遊びたいでしょ?僕だけ遊んでるのなんて不公平だよ。
ヨウ兄の代わり、僕にだって出来るよ!だから、いいよ!入れ替わろう!遊んできてよヨウ兄!」

『シュウ・・・・・・ありがとう。』

俺達はお互いの服を交換した。
普段着慣れていない服を着てるせいか、シュウは少し戸惑っていた。
首元のショール曲がりを直した。こうやって見ると本当に似てる。
目の前に俺が・・・"逆巻ヨウ"がいた。

「わぁ、僕が目の前にいる!」

『それは俺のセリフだよ!俺が目の前にいる!』

シュウも同じ事を思っていたのか、目を輝かせて俺を見てきた。
その時、部屋をノックする音が聞こえた。
ドアが開けば、次に待っているのは俺が嫌いな言葉。

「ヨウ様、次は他国語学のお勉強ですよ。おや、シュウ様はヨウ様のご様子を見にいらしたのですか?」

『うん!だから爺、少しだけヨウ兄の勉強時間減らしてよ!僕、ヨウ兄と遊べない。』

「爺。ちゃんとするから、だから母さんには内緒で・・・お願い。」

俺はシュウと目を合わせ、演じた。
シュウは俺を、俺はシュウを・・・入れ替わりは完璧だった。
バレる事はなかった。爺にバレないと分かると、後は簡単だ。
事あるごとに俺達は入れ替わって遊んでいた。
それが凄く楽しくて、嫌いだったあの部屋から抜け出せて、自由に遊べる。
苦手だった勉強も、入れ替わる日が楽しかったから我慢できた。

「爺、もう時間じゃないのか?俺、この後シュウと一緒に寝るんだけど・・・」

「あぁ、少しだけ過ぎてしまいましたね。では、本日のお勉強はこれで終わりですぞ。お疲れ様です、ヨウ様。」

『ヨウ兄!終わった?早く僕の部屋行こう!今日ね、楽しい事あったんだ!』

部屋に入れば、そこには俺を演じてるシュウがいる。
手を繋いでその部屋から抜け出し、自室向かう。
部屋に向かう廊下で、俺達は顔を見合わせて笑う。

「ヨウ兄!」

『っと、ははっ!お疲れ様シュウ!』

部屋に入れば、俺達は元に戻る。
飛びついてくるシュウを受け止めて、ベットに倒れこむ。
そこでシュウは俺に勉強の内容を教えてくれる。
入れ替わってる間の事は、こうしてお互いに教え合う。
だって、屋敷いる者には"俺"が勉強してると思わせてるから、勉強内容が分かってないとバレるだろ?
それにシュウに教えてもらってる時は、不思議と勉強が嫌いじゃなくなるんだ。

『・・・なるほど、大体理解出来たかな。シュウ、ありがと!』

「うん!僕でヨウ兄の役に立てるなら嬉しい!あ、ヨウ兄の方はどうだった?」

シュウが前に言ってた、森の中にある湖畔によく行くようになった。
月が水面に映って輝いてて、動物達が身体を休めに来ているのか、様々な種類がいた。
小鳥、ウサギ、時には鹿もいたことがある。
本当にゆっくりした時間がそこには流れていた。

『シュウが言ってた通り、綺麗で暖かい場所だった。あそこ、俺も好きだな。』

「いつの間にか動物が横で寝てるんだよ。触っても起きないし、いっぱい寄ってくるんだ!」

『それは俺もだったよ?警戒もせずに寄ってくる。でも、シュウが優しいから寄ってくるんだよ。』
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