小説

□A
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2,何と無く腹が立ったから


―――





…とまぁ、そんな事があった後。

「着てくれないなら脱がしちゃうよ?」
「開き直んな馬鹿」
「だってー!着てほしいんだもーん!」
「…はぁ……。それより飯にしようぜ」

臨也に呆れながらも飯を促すと、臨也はキッチンへと向かって行った。

「…似合うと思うんだけどなー」
「まだ言ってんのかよ…。なんで男があんなの着なくちゃなんねぇんだよ」
「…男の癖に可愛いのは誰だよ」
「……」

…反応に困る。
むかつくような、嬉しいような、ぶん殴りたいような。

「顔赤いよー」
「なっ…!!?」

臨也はゆっくりとこちらに寄ってくる。
…やばい。
この流れは駄目だ。

「そーゆー顔するから、俺は不安になるんだっつーの」
「…は?」
「俺以外にその顔見せるなってコト」

そう言った臨也はソファーに座る俺の高さに合わせるようにして、顔をまじまじと見てきた。

「…な、なんだよ。離れろよ」
「本当さ、君はどうしてこう俺を乱すんだろうね…」
「何言っ……ん!!」

急に唇を塞がれたことに驚き、思わず声をあげる。
臨也は、深くするつもりはなかったらしく、すぐに離れた。
……ちょっと名残惜しい。

「大好きだよ、シズちゃん」
「っ…!!//」


ムカつく。
お前だって、こんなに俺を乱してるじゃねぇか。


「なんか、腹立つ」

臨也の腹を軽く殴ってやった。
するとこいつは、俺にしか見せない緩んだ笑顔を見せた。
俺も薄く笑い返す。

いつも通りの幸せなやり取りだった。



「そんなに見んなよ…め、飯は」
「はいはい」







next punch!! →

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