LOG2
□一月の魚
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十二ヶ月のひと続き
(お題:彩街様より)
一月の魚
視線の先に光る水面がある。
ゆらめくそれはとても綺麗で時々さかなの群れや、それからたくさんの泡が、視界を縦横にはしっていくのをずっと見ていた。
音は聞こえない。
それにここは冷たい海のはずなのに、全然寒くなんかなかった。あのさかな達も冷たさを感じることなく泳ぎ回っているんだろうか。とても、気持ち良さそうだ。
(俺もあんな風に……)
自由に――そう思って伸ばした腕。
水の抵抗に阻まれてゆっくりとしか動かせない。だが、何よりも。
(何でこんなトコ、居るんだっけ)
気付いてしまった途端、ごぼ、と久し振りに音が聞こえた。
吐き出された空気。しかし次に吸い込むべき酸素は周りに無い。
落ちてゆく――否、沈んでゆく。
不思議と恐怖感は無く、むしろ気持ちが良かったかもしれない。うらうらとした水に包まれている感覚に、次第に目が開けていられなくなる。
目を閉じて、次に開けた時、俺はあのさかな達みたいになれるのかな、なんて。思って。
一瞬の真っ暗、
少しして、きんいろ、ちょっとのあお。
世界がそれでいっぱいになる。
さかなに、なったんだろうか。すくわれる。
――救われる?
俺は忘れかけていた肺呼吸を思い出し、だれかの、隊長の、腕の中で産まれたての赤んぼみたいに泣いた。
【哺乳類<鳥類<爬虫類<両生類<魚
生きてゆく世界はこの順に厳しい】
――――――――――
ノルウェー沖の寒中水泳の時に
こんな展開があったっていいじゃないか、
的な
やりずぎましたの前日譚っぽい