シャロウスカーズ
□飛べない鳥
1ページ/1ページ
歩く
街を歩く
不自然でない、暗い金髪に、あどけなさの残る長身の少年が、まっすぐに前を見据えて歩いた
まだ昼間の街中には、若者や、仕事の最中のサラリーマンが、せかせかと歩いている
その中で、人の流れに流されることなく、いや、流れに逆らうように、もはや周りなど見えていないといわんばかりの様子だった
「きゃっ」
自分の胸に、ぽすりと顔をうずめた見知らぬ少女
「ご、ごめんなさい」
ペコリと頭をさげる少女に、返事をしようとした喉元から、なにかがせりあがってきて、口をつぐんだ
「…ッ」
「あ、あの…大丈夫、ですか?」
「……」
ぞくり
背筋に、冷たい何かが走る
ああ、憎い
何も知らずに生きているこいつ、せわしなく働き続けるサラリーマン、チープな愛を語る滑稽な恋人たち
殺してやりたい
何故、こんなどうでもいい人間が生きていて、
何故、あいつが生きていないんだ
憎しみにかられ、ポケットに眠る無機質なそれを握り締めた
「まってよー!」
はっとして、後ろを振り向くと、先ほどの少女は、すでに自分のそばにはいなくて、安堵とも、苛立ちともつかぬため息をこぼした
「朔絽…」
ああそうさ、この憎しみにかられて俺におまえを想う資格なんてない
それでも…