02/06の日記
22:18
それが嘘だと信じたかった
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「別れようぜ」
それは日差しが温かくなってきていた昼過ぎの屋上での事だった。
獄寺の放ったその一言で、山本の頭の中は真っ白になった。
なんで、そんな話になったんだろうか。今までいつも通りだった。何故、獄寺がそのような事を言うのかが理解できなかった。
「もう¨ごっこ¨は終わりにしようぜ」
そういって見つめてきた獄寺の碧の瞳は、山本を映してはいなかった。
別れようと言った獄寺は山本の返事なんか聞く気もないのか、そのまま踵を返した。
山本はといえばその場から一歩も動く事ができなくなっていた。
その場から動くことのなかった山本の耳に扉の閉まる音がなぜだか大きく聞こえた。
それを合図に山本は扉の方へ振り返った。
「なんでだよ、獄寺…」
誰もいなくなった屋上にその言葉だけが響いた。
もう問うても答えるものは誰もいない。
山本が返事をしなかったのも、追い掛けなかったのも、それは獄寺の言葉が嘘と信じたかったから。
いつもみたいに、嘘だよ、バァカって言ってほしかったから。
ーーーそれが嘘だと信じたかった。
ポタポタとアスファルトを濡らす滴は、自分のそれじゃないと…。
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