01/09の日記

10:22
クリスマスソングを歌わないで。
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おもしろい奴。
それが山本から見た、獄寺隼人の印象だった。

白銀の髪と若草色をしたビー玉のような瞳。ソレを縁取る髪と同色の長いまつげ。自分とは違い焼けることを知らない白い肌。

ーー才色兼備。
勉強も出来、運動も出来る彼にはその言葉がふさわしいだろうが、それにそぐわぬトゲトゲとしたゴツいアクセサリー。乱暴な言葉使い。人を寄せ付けぬとするように向ける眼はとてもキツい。

そう、獄寺隼人は少々クセのある性格だった。


「獄寺ー!」
「……」


部活帰り。前を歩いている獄寺を発見した山本は獄寺に手を振った。
さっきも言ったように獄寺は少々クセのある性格だ。山本が名を呼んでも総無視。スタスタと前を歩いていってしまった。


「待てよ。獄寺」


しかし、山本はさほど気にした様子はない。彼曰く「いつものこと」だからだ。
親友の沢田綱吉の事は「10代目」と言って慕っているのだが、それ以外の人間を寄せ付けようとしない。


「…んだよ」


走ってきてまで自分に声をかけた山本に獄寺はキツい眼で睨みつける。


「今帰りだろ?一緒に帰ろうぜ!」
「なんで、てめーなんかと…」
「まぁまぁ」


宥めるような言葉を使えば、獄寺の機嫌を損ねてしまったらしく、ギュッと眉間に皺が寄った。

しかし、何も言わずただ無言で前に進むだけだった。


山本は知っていた。
獄寺は自分と一緒に帰ろうとしてくれていた事を…

獄寺と出会って二度目の冬。
獄寺はこの時期の冬が嫌いらしい。だから、獄寺は気の使うことのない山本と帰るのだ。
山本は自分から獄寺に話しかけてくるので、余計なことを考えずにすむのだ。

特に、今日は…


「Merry Christmas!」


商店街に差し掛かるとクリスマスソングが流れ、街は綺麗に装飾されておりキラキラと光輝いていた。

獄寺はそれをなんとも言えない寂しい目で見るのだ。

何があったかなんて知らない。聞きたいとも思わなかったが…


「獄寺!今日こっちから帰んね?」
「はぁ?なんでだよ」
「そんな気分なんだって」


獄寺の肩を抱きいつものように笑い商店街から遠ざかる。
流れていたクリスマスソングは離れるに連れ聞こえなくなった。
山本は抱いていた肩を解放すると冷たくなった手を摺り合わせ


「今日もさみぃな。獄寺…」


ふと、横に視線を向けると隣にいる筈の彼の姿がなかった。
そのまま後ろを向けば、ぼぅ…と何かを見つめている獄寺が目に付いた。
何を見ているのだろうと視線を追えば、キラキラしたツリーと楽しく談笑をする家族の姿だった。
直ぐに視線を獄寺に戻すと、彼は淋しそうな瞳でその家族を見つめていて、山本は切なくなった。

獄寺の家族はイタリアに居て、ここには居ないのだ…


「獄寺」


名を呼んでそれに気づいた獄寺が自分の方を見た瞬間、山本は前から獄寺を抱きすくめた。驚いているのか、抵抗はない。


「…おい。なんだよ野球バカ」
「……ごめん」


もう少し、このままで居させて…。そう呟けば、獄寺はおずおずと背中に手を回し、肩に顔を埋めた。


「…仕方ねぇな」
「うん。ありがと獄寺」




ーー願わくば、君に幸せが訪れますように…







ハラハラと白雪が舞う。
アスファルトに落ちた白雪はじわりと溶け、姿を消した。
ギュッと背を抱く腕は小さく震えていた。


†end†

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今更になってクリスマスネタです。
だって書けなかったし…←
なんか、少し長くなった…。纏めるの苦手なんですはい…orz


切甘とかシリアス好きです←←

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