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□日付変更線
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夏休みも終わり。もう秋になると言うのに暑さの抜けない9月

夏の今頃は茜色だった空も今では藍色の闇に包まれていた
そんな空を確認して、獄寺はカーテンを引いた


パラ…と、本のページを捲る。ふと見たカーテンの隙間からは、藍色の闇に金色の月が浮かんでいた



ピンポーン…
静かな部屋にインターホンが鳴り響いた












【日付変更線】




















「よっ!獄寺」


玄関扉を開けた獄寺は軽く後悔した。そうだ、先に覗き穴から確認すれば良かったのだ。山本だとわかっていたら開けなかったのに…

扉を閉めようとも思ったが、山本が足を入れているので閉めようにも閉められない…


「何のようだよ。帰れ!」
「まぁまぁ!寿司持ってきたからさ。なっ?」
「……」


ーーで、結局中に入れてしまったわけで(断じて、寿司で釣られたわけではない!)仕方無くリビングへ通した
山本はフローリングに腰を下ろすと、持ってきた寿司をテーブルに置いた


「獄寺の好きなマグロ沢山握って貰ったんだぜ?」
「…あっそ」


獄寺が茶を出すと山本はサンキュ!と茶を受け取った。山本は余程喉が渇いていたのか、その茶を飲み干した。おかわりいるか?と訪ねたら、おう!と言って笑った


「ごちそうさま」
「ん…」
「美味かったか?」
「あ〜…」


まぁまぁ。そう答えた獄寺に山本は、何だよそれ。と苦笑した

軽く会話を交わした後。山本は思い出したように鞄から何か箱を取り出した。獄寺が首を傾げていればそれに気付いたのか山本はニッと笑った


「じゃ〜ん!」
「…は?」
「金無かったからさ…、ちっせぇけど我慢な〜」
「待て、何だコレ」
「ケーキ」
「それくらい見りゃわかんだよ!!」


山本が出したのは、市販で売ってるような二つの小さなケーキ。獄寺は山本がケーキを買ってくる意図が分からなかった
怪訝な顔で山本を見やれば、山本は当然のように言ってのけた


「だって、明日獄寺の誕生日だろ?」


獄寺は目を丸くし山本を見つめた。山本はやはり笑うだけだった


「お祝いしよ。獄寺…」



藍色の闇が部屋を包み込む。灯りは小さなろうそくの灯火

部屋には静寂が流れ、カチリ…と時計の針が重なった


「誕生日、おめでとう」


吹き消されたろうそくの灯火

ゆっくりと、互いの唇が重なった









日付変更線
針が重なったその時に、大切な言葉を…


(一番に、ありがとう。と言いたかったんだ…)

†end†
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獄誕企画に出した小説です!

happy birthday!!!Hayato!!!

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