番外編等等…

□梨乃の物語
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“死んでほしくない”

こんなにも、そう強く思った相手はいなかった。

白であろう服は、ベージュに近くなり
グレーのズボンは破れている。

見ていて苦しくなる。

金持ちの叔父・アラン。

彼の所有する、一つのビルの屋上は
イタリアの街を綺麗に見渡せる。

生まれながら、マフィアの世界を知っていた俺は
ここでいつも心を清める。

そこから 音が聞こえてくる。

普段は人気の無い屋上。
そこにいた茶色の影は、空を見ていた。

“ストリートチルドレン”な彼女。

どうしても、放っておけなくて。

「死ぬなよ。」
「…は?」

俺には母さんも父さんもいない。

病死と他殺。

人がいなくなることが、どんなに恐怖か。
俺は知っている。

現に妹の夜空は
父の死後、一年近く植物状態だったんだから。

「そうだ…暇ならさ、俺ん家来ねぇ?」
「…だから、あたしは知らないヤツなんかに
ホイホイついてかないっつーの。」

「なら、強制的に。」
「は? ちょっとアンタ頭おかしいんじゃ……」

気絶させて
無理矢理、家へ連れて帰った。

自分の心に戸惑いながら。



***
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