小説2

□朔月転生 最終話
2ページ/12ページ





「なにそれ、どういうことなの!」

「どういうことって…」

俺はキラに全部を吐いた。
どこかで限界を感じていたのかもしれない。



カガリが目覚めた直後、一応「ずっとそばにいて」とは言った。
けれど俺は涙が止まらなくて、それきり何も言えなくなってしまったのだ。
カガリの返事を聞く余裕もなかった。

そうこうしているうちに看護師が来て、医師が来て…
カガリの両親やキラが駆けつけて…
検査や診察の結果、カガリの記憶は何も欠けてはいなかったし脳に異常もなかった。
そうしてリハビリ専門の病院に移ることになった。


リハビリに入ってからは、やっと2人きりになれることが多くなった。
俺はカガリの車椅子を押して散歩したり、食事やリハビリを毎日手伝った。

けれど、カガリはなぜか悲しそうに笑うだけだった。
会話もあたりさわりのないものばかりで、俺のことをどう思ってるかが分からなかった。


たまらず一度聞いた。“俺が来るの、迷惑?”と。
するとカガリはすぐに首を大きく横に振ってくれた。
迷惑とは思われていないらしい。

でもどうしてもカガリは心を開いてくれなかった――――


「どうりでカガリの指にリングがないと思ったら、そんなことになってたの」

「指輪は渡すどころか、まだその存在も話してない…」

「はぁ…ほんと勉強以外のことに関しては不器用なんだから」

「………分からないんだよ」


強引にカガリの気持ちを問い詰めたらいいのか。

俺の気持ちをぶつけたらいいのか。

距離を置いてカガリの心の整理ができるのを待ったらいいのか。

そばにいて心を開いてくれるのを待ったらいいのか…。



「キラ…人を大切にするってどういうことなんだろう…」


初めてだった。
人を心から大切に思うのは初めてで、どうしたらいいのかいくら考えても分からなかった。





次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ