小説2

□朔月転生 最終話
1ページ/12ページ





カガリが目覚める直前に見た夢を、俺は未だに思い出せない。


ただ、その夢を見てからは…
俺はずっと前からカガリを好きだったような、そんな深い感覚が残った。


一つ驚いたのは、カガリも何か夢を見たのだということ。
中身は思い出せないけれど、その夢によって目が覚めたらしい。

…俺たちは同じ夢を見ていたのだろうか。



今となっては分からないけれど…なぜかそんな気がした。





【朔月転生 -サクヅキテンセイ- 最終話】






「退院おめでとう、カガリ!!」

「キラ! みんなも!!」

今日の病室は大学の仲間たちも来ていて、たくさんの人で溢れていた。


カガリの目が覚めたあの日から、約1ヶ月が経過していた。
この1ヶ月間はリハビリ専門の病院に移ってリハビリに専念していた。
1年間も眠っていたことによって、身体がすぐに普通の生活ができる状態ではなかったのだ。

俺は少しでもカガリの支えになりたくて、毎日リハビリに立ち会った。
そして今日、無事に退院の日を迎えた。


「みんな就職活動で忙しいのに、来てくれてありがとな」

「なに言ってるのよー!みんなカガリが戻ってくるの待ってたんだからね!」

「そうそう!それに来年カガリも就活地獄だからね〜v色々教えてあげようと思って♪」

「ええ〜!地獄なのか〜!?」

…病院の廊下を、友人に囲まれて歩くカガリ。
その屈託のない笑顔に、俺は痛みを感じた。

リハビリ中…カガリは俺にこんな顔を見せてはくれなかったから―――



カガリたちの集団から少し離れて後ろを歩いていると、キラが無邪気な顔をして声をかけてきた。


「で、カガリと正式に付き合うことにしたんでしょ?」

「え?」

「君たちリハビリ中ずっと一緒だったじゃない。なんて言って告白したの〜?」

「………」

いきなりキラに痛いところを突かれ、俺はばつが悪くなった。

自分の情けなさを露呈するようでなるべく言いたくなかったが、
キラには頭が上がらないため、本当のことを言うしかなかった。

「……まだ言ってない」

「へ?」

「だから、まだちゃんと告白してないんだよ…っ」

「え、ええ…っ!?」





次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ