小説2

□朔月転生 第6話
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心臓が恐ろしい音をたてていた。
嫌な予感が治まらない。


病院に駆け込むと、長イスに座って俯いていたキラがいた。


「!!」

キラは俺を見てビクッと反応した。

「どうしてここに…」

「キラ…っ!!」

俺は息を整える間もなくキラの肩を掴んだ。
なりふり構ってなどいられなかった。


「カ、カガリは…!? なんでこんなことに―――」

「“なんでこんなこと”? そんなのこっちが聞きたいよ」

「…!」

「昨夜カガリに何て言ったの……!?」

キラは、俺の質問に質問で返してきた。
やっぱり…カガリは俺に会いに来たのか――――

俺はしばらく言葉が出なかったが、正直に告げた。


「……昨夜は会ってない。けど…おそらく女と一緒にいるところを見られた…」

「……っ!!」

覚悟して言ったことだが、キラは俺の襟元を思いっきり掴みかかってきた。
俺は誰かに殴って欲しかったのかもしれない。
愚かなことばかりしている自分を思い切り責めて欲しかった。

しかし、なぜかキラの拳は俺の頬の直前でピタリと止まった。
震える拳が降りていって…キラは俯いた。


「こんなことならカガリを行かせるんじゃなかった……っ」


キラの様子からカガリが無事ではないことがハッキリと分かった。

「キラ、カガリは…!」

「帰って。もう来ないで欲しい」


それは…さっきまでの激情とは打って変わり、氷のように冷たい声だった。


「ちょっと待ってくれ…カガリはどうしたんだ、大丈夫なのか…!?」

「君には関係ない。君に知る権利なんてないよ」




「二度とカガリに近づかないで」





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