小説2

□朔月転生 第6話
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もし時間を元に戻せるのなら戻したい。

けれど、戻したところでやり直し方なんて分からないんだ。
俺は一体どうすれば良かったんだ…



記憶を失くして、まったく知らない人が“恋人”だと言われて…
泣いている彼女を抱きしめて「愛してる」と囁けばよかったのか。
何も覚えていないのに…?



結局、時間を戻せても俺はまた彼女を傷つける。



また同じことを繰り返すんだ――――





【朔月転生 -サクヅキテンセイ- 第6話】





『昨夜カガリが救急車で運ばれたって――――知らないの!?』

『昨夜って…』

『フラフラ下向いて歩いてたらしくて、バイクと接触したとか…』

『!!』

『アスラン君のマンションの近くだよ。だから私てっきり知ってると思って…』



彼女が…
カガリが昨日俺のマンションに来ていた――――



頭の中で一瞬にして組立てられた最悪のケース。

背筋が凍って、俺は弾かれたように駆け出した。



…初めて知る感情だった。

心臓が引きちぎられる。
闇に引きずり込まれる。
とにかく無我夢中で病院へ走って…
まるで自分が生きてる心地がしない。


それは、唯一無二の存在を失うかもしれないという“恐怖”だった。





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