小説2

□朔月転生 第5話
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こんなに苦しくなるなら…最初からアスランと出会わなければ良かったのかな



「愛してる」って言って抱きしめてくれたアスラン。

「忙しくなるから会えない」って言って他の女の子と歩いていたアスラン。

冷たい目で私を見たアスラン…



何が真実なのか分からない。
一体どれが本当のアスランなのか、分からない――――





【朔月転生 -サクヅキテンセイ- 第5話】





冷たい図書室の机を背に感じて、寒気がした。

いつもアスランと一緒に勉強してた…机…
アスラン…!!


「安心しろ、前より満足させてやるよ…」


この人は…誰…!?

こんな暗い瞳も笑い方も、知らない。
怖い
怖い…!!

「やめて…!やめて―――!!」

力いっぱい抵抗すると、“目の前の人”はポケットから何かを取り出した。
一瞬、私の中の時間が止まった。


「―――!!」



アスランの…ハンカチ…

間違いない
去年の誕生日…私がプレゼントした…


“フツー僕らの歳の男が持ってないでしょ!”
“そうなのか? でも俺は小さい頃からの習慣だし…”


アスランだ――――!!

「っ……ア、ス…っ」


あれから男友達全員に聞いてみた。
本当にハンカチを持ち歩いてる人なんて一人もいなかった…
アスランだけだった。

アスランは、消えてなんかない。
ここにいる…
戻ってきて、アスラン―――





…その性行為は、強く激しく打ち付けられて終わった。
その間私はハンカチで目を覆いながら、アスランの優しい笑顔だけを思い浮かべていた。

祈るように。




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