小説2

□哀唄 Short Story
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【哀唄 Athrun Side】




ゆうべカガリの夢を見た。


こっちを見て笑っていて、心臓が高鳴った。


カガリ…!


そう俺の身体が反応したところで、目が覚めた。








「だからー、その子と付き合ってるわけじゃないんでしょ?」

「…そうだけど……」


カガリと離れてから半年がたとうとしていた。

その間も何人か告白されて断ったが、
この赤毛のショートの子だけは「好きな子がいるからごめん」ではすんなり終わらなかった。
正直困っている。


「ねえ、ほんとにそれでいいの?アスラン」

「!」

彼女がいきなり至近距離で俺の顔を覗き込んできてビックリした。


「ちょ…っ…」

「いつ振り向いてもらえるかも分からないのに、“今”を無駄にするなんてバカよ」

「………」

「そうやって我慢して、何年も待つのは身体に悪いわよ?」


…言われなくても、俺自身が一番限界を感じていた。
カガリに会いたい。
触れたくて仕方ない。


おとぎ話じゃないんだ。
俺だって18歳の生身の男で…自制しきれないときがある。

そんなときは決まって昨夜のような夢を見て―――



「…俺は、その子じゃないと駄目なんだよ。何年待つことになっても構わない」

「本気で言ってるの?」

「ああ」

「意地とかじゃなくて?」


「違うよ。ただ…彼女と2人で幸せになりたい、それだけなんだ…」


…去年、一人の女の子を抱いて楽になろうとしたことを俺は忘れない。
カガリ以外愛せないって分かったことを。



「はぁー、そこまで言われたら引き下がるしかないか」

ため息をついて、その子はやっと顔の距離をとってくれた。


「ありがとう…すまない」

「そのアスランの好きな子、超絶美少女だって学内ですっごい噂になってるわよ」

「ええっ?」

「アスランが誰にも靡かないから。で、本当のところはどうなの?」

「……」


ふと、俺が告白したときのことを思い出した。

『ばか……』

たまらなく嬉しくて、彼女を心から好きだと思った瞬間。


「…ああ、誰より可愛いよ。もちろん、心の中も」

「うわ、片思いなのにノロケたわね!?」





―――“5年後でも10年後でも、いつか”なんて

現実には易しい時間じゃない。

でも、おとぎ話みたいに楽な世界じゃなくても、
俺はたった一人だけを想う。




…カガリ。
君は今どうしているだろうか。

いつか自分に自信がついたら、会いに行くよ。

絶対に君を振り向かせてみせるから―――







END

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