小説2

□〜エピローグAthrun side〜
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「アスラン君、ラクスからの伝言だ。明日19時にうちに来てほしいと」


定例会議が終わったあと、アスランはシーゲルから個人的に声をかけられていた。

ラクス…。
アスランにとって幼馴染であり姉のような存在。

そのラクスが1週間後に結婚するという話は聞いている。今やプラント中がその話題で持ちきりだ。
もちろんアスランも結婚式に出席する予定だから、それに関することだろうかと思った。





【偽りの系譜は 〜エピローグAthrun side〜】






―――翌日、アスランが久しぶりに訪れたクライン邸。

アスランはここで12年もの時を過ごした。
その間一度も家の外に出ていないから、12年間まるまる全てをここで過ごしたことになる。
地球から戻ってきて政治の世界に身を置いてからは、ここを出て一人暮らしをしているが。



「お待ちしておりましたわ。さすがアスラン、時間ピッタリです」


いつもより一層にこやかなラクスに迎え入れられて、アスランは大広間のソファに腰を掛けた。

幸せそうだな…ラクス…。もうすぐ結婚するんだもんな。
などと思って見ていたが、まさかそれ以外の理由でご機嫌だとは思いもしなかった。




「ああ、もう放送が始まってしまいますわ」

「?」


なぜかラクスが大画面のTVモニターを点ける。
そこには、ややテンション高めの女性インタビュアーが映し出された。



『さあ!1週間後に控えたプラントの歌姫のご成婚!ラクス様に縁が深い方がいらっしゃるということで、ここ、地球のオーブに来ております』



「!」

「…オーブ関連のニュースなんかは、わたくしが言うまでもなくアスランは欠かさずチェックしていらっしゃるでしょう?
 ですがこれはわたくしの特番ですし、彼女のプライベートですからご存知ないかと思いまして」


アスランに、もうラクスの声は聞こえていなかった。
ただただ画面に見入って、意識のすべてをそこに向けていた。
懐かしいオーブの海……そして。


『こちらはオーブの獅子の娘、カガリ・ユラ・アスハさんです』



カガリ――――


ああ、カガリだ・・・



閣議の内容を伝える彼女の凛とした姿は、この4年間何度もメディアで見てきた。
カガリの顔も声も、ひとつも見落とさないように国際チャンネルのニュースをチェックしていたから。

でもこんな、表情豊かなカガリの顔は――――





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