小説2
□偽りの系譜は
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カガリは日当たりのよい立派な客室を自室としてもらい受けたが、毎日のほとんどをクライン邸の書庫で過ごしていた。
書庫といっても学校の図書室のような空間だ。
いくつもの本棚が立ち並び、学習できる机や椅子もある。
カガリは学ぶためにプラントにやってきたのだ。
といっても大学や研究機関には入っていない。
プラントの政治や経済を現地で独学で学ぶため。
ときおりラクスとお茶をしたり、外でジョギングやストレッチをしたり、メイドの掃除を手伝ったり、
それ以外の時間はすべて書庫での勉学に充てていた。
日中シーゲルやラクスは家を空けているため、そこはいつもカガリ一人の姿しかなかった。
ある日、カガリがいつものように書庫で勉強していると、なにか違和感のようなものを覚えた。
「あれ…」
さっき向こうの窓枠に置いてあった本が、いつの間にか無くなっている…?
窓枠から落ちてしまわないようにと、ここから帰るときに片付けようと思っていた。
本が勝手に無くなるわけがない。
でもこの書庫には最初からカガリ一人しかいない。
「…?」
しばらく考えて、カガリは自分の気のせいだと思った。
毎日ここに来ているから昨日思ったことを今日だと勘違いしたのかもしれない。それで昨晩メイドが片付けたのだ。
・・・でも、どうしてあんなところに本が?
ラクスは書庫に来ないしシーゲル様は書斎があるからここを使わないのに…。
あとはこの邸宅には通いの料理人やメイドが数人いるだけだ。
「………」
なにか、変だと思った。