小説2

□朧月
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「カガリと一緒にいるとき俺が何を考えてるか…」




「それが分かったら俺の部屋にきてもいいよ」




…出会った頃とは違う、低くなった声。

アスランの気持ちが知りたいのに

ずっと靄に包まれているみたいに見えなくて、苦しい






【朧月】







ああ

このグレーのブレザー。
ずっとずっと着たかった。


「よく似合ってるわよ、カガリ」

「ほんと?」


入学式の朝、支度ができたカガリを見て母ヴィアが感慨深く息をついた。

「まさか本当に、カガリがあのオーブ付属中学に受かるだなんて…」

小学4年からの日々を思い出す。


「受験するなんて言い出したときには卒倒しそうになったけど」

「私だってやればできるんだから!」

「お隣のアスランくんのおかげねえ」

「ちょっ…、アスランの力は借りずに自力で勉強したよ!部屋に一人で籠ってたの知ってるだろ!?」


それでも受験を決めたきっかけはアスランくんでしょう、と心の中で言いながらヴィアは微笑んだ。


―――3年前、アスランも難関私立のオーブ付属中学を受験して合格していた。
カガリはそれと同じ道をたどっているのだ。

9割の同級生が公立の中学に進学する中、アスランとカガリの進路は異様に際立っており
アスランは父親の勧めだというが、カガリの受験理由は誰が見ても明白だった。


アスランに追いつきたい。
それだけ。

でも・・・
今から行く学校にはもう、アスランはいない。先月卒業してしまった。


3歳差の幼なじみ―――この差は永遠に埋まらないのだ。



「………」

鏡に映った憧れのブレザーを見て、一喜一憂する。
嬉しくて飛び上がりそうになる反面、つらくて泣きそうになる。
そこには複雑な想いが交錯していた。


3年前―――
自分がまだランドセルを背負っている中、アスランがこのブレザーを着ていて
急に胸がつぶれそうになった。
アスランが遠くに感じて、隣の家にいるのにそう感じてしまって…、泣き続けた。


それで恋と自覚した。


大好きな人に、どうしたら追いつけるだろうか。
アスランは私のことをどう思っているのだろうか・・・。

ずっともがき苦しむように探していた答えは、未だ靄の中。


合格したところで何の光明も見えない今の関係に、カガリは静かに瞳を伏せた。







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