小説2
□境界線V−縁り糸−
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「そこに座って?」
ブレザーを脱ぎながらアスランが指差したのは、ベッドだった。
その仕草一つ一つにカガリの瞳は釘付けになって、入り口から動けなかった。
どくん、どくん、と強い心音がただ全身を支配する。
何でも知ってると思っていたアスランの違う一面を知って…昨日からこの音が止まらない…。
この部屋に入ると、無条件に昨日のことを思い出して、顔が熱くなる。
「別にこのまましてもいいけど……どうせカガリ、立っていられなくなるよ。昨日みたいに…」
アスランがくすりと笑って、カガリの腰を引き寄せた。
「ほら…」
もうそんな何気ない声でさえも、カガリは全身が痺れるような感覚に支配され…
促されるままにベッドに腰掛けるしかできなかった。
アスランもその隣に座り、なめらかな頬に口唇を這わせながらゆっくりとカガリの上着を脱がせていく。
「アス…っ」
慌てて止めようとしたカガリの手は、固く強張っていた。
琥珀の瞳が、不安に揺れる―――
アスランはその小さな手を取ると、指先に口付けながら囁いた。
「必ず抱くって言っただろう…?」
「だ、だ…抱くって…、えっ…」
アスランは熱をもった瞳で見つめたが、カガリはまだ戸惑いの色が強いようだった。
まさか本当に“抱き締める”だけだと思っているのだろうか。
「…昨日の続き―――……セックスって言ったら分かる?」
アスランは強く押し付けるようにして口唇を重ね、そのままカガリの躰をベッドに沈めた。