小説2

□境界線
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いつも一緒にいる俺と君。



“恋人”ではない。

“幼馴染”というほど、昔からの付き合いではない。

“友人”という、ありふれた浅いものでもない。




『…カガリみたいなやつ初めてだ。きっと俺、カガリ以上の友達はもうできないな。』

中学2年のとき、俺が彼女に言った言葉だった。



――――俺達の関係を言葉に表すなら、きっと・・・“親友”なんだろう。






【境界線】







「アスラン!ちょっとこれ提出してくるから、昇降口で待っててくれないか?」


カバンとプリントを抱えながら、カガリがとことこ近づいてきた。
なんでもない放課後の風景。
その仕草が可愛らしくて、自然と顔が緩んでしまう。

「ああ、わかった」

「クレープ食べて帰ろうな!」

「今日もか? ほんと好きだな、カガリは」

「いいだろ別に! じゃあ後でなっ」


そう言ってカガリが元気良く教室を出て行くと、自分も帰る支度を始めた。


一緒に帰るのはいつものこと。
カガリと出逢ってから3年、自然と毎日続いていることだった。


そこに、近くにいた同じクラスのカップルが声をかけてきた。

「なんかお前ら見てるとさー、男女間の友情って成り立つんだって思えてくるよ。」

「ほんと。いつも仲いいわよね」


中等部からの持ち上がりが多いこの高校では、
俺とカガリが固い友情で結ばれていることは皆が知っていた。

最初は恋人同士だと勘違いするが、カガリがあっさり「親友だ」と答えるため
そのサバサバした様子に恋人のような甘さが感じられず、みんな納得したらしい。


「…ああ」

思う処は色々あるものの、素直に微笑ましいと感じてくれているクラスメートに
当たり障りの無い笑顔で応えた。




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