小説2

□その小さな手を
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「どれだけ……」






キスの合間に熱い息がかかる。


「一体どれだけ待ったと思う…?カガリ…」

「アスラ…っ」


アスランの切なげな声でカガリは痺れるような感覚に陥った。
キスも愛撫も…ぜんぶが「今からカガリを抱く」と告げている。



「5年だ」




こんな一言じゃ足りない…
俺が待っていた、気の遠くなるような長い時間は…。

ずっと君を感じたくて





「気が狂いそうだった………」








【その小さな手を】








5年前…

宇宙最大の国家「プラント」――――
この広大な宇宙は、地球から辺境のコロニーまですべてプラントが支配していた。

背後にザフトと呼ばれる軍隊を擁し、他国を従属させることで戦争のない世界を作りあげていた・・




「では、以上で本日の議会は終了する。解散」


「………」

そのプラントで、若くして最高評議会議員となった男――アスラン・ザラは、今日の公務を終えて機械的に席を立った。


現在27歳。しかしその背には、歳に似合わないほどのものを背負っていた。
実質宇宙でトップ5ほどの力を持っているのだ。

最高評議会議長が自分の父ということもあるが、アスランがここまで上り詰めたのは本人の力である。
嫌でも将来を期待され、いずれ宇宙は彼のものになるとプラント国内では有名だった。


「…ダコスタ、これを持って先に戻っててくれないか」


アスランは自分の秘書官に持っていた資料をすべて渡した。

「アスラン様はどうなさるおつもりですか」

「少し、歩いてくる」

一人になりたいから、と言わなくても秘書には伝わった。

「では、お先に失礼致します」





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