小説1

□Last Kiss
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「ん…っ…、アスラン…?」

「黙って……」

いつまでも続く柔らかなキス。
アスランは行為を終えた後も、ベッドの中でカガリの口唇を求め続けた。

カガリが不思議そうに問いかけてもすぐにまた塞がれて。
その力強い腕は、まだまだキスを終える気がないと言っている。


世界中が参加した記念式典を滞りなく終え、2人は宿泊先のホテルでゆっくり夜を過ごしていた。

今日は終戦記念日。
2年前、デュランダル議長や沢山の尊い命が…生を終えた日だった――――






【Last Kiss】






『こんな指輪の渡し方ってないんじゃないか!?』

『…悪かったな』

今でも鮮明に思い出す。
真っ赤になって怒るカガリと、同じように真っ赤になって目を逸らす俺。

一時はあのキスが最後になるんじゃないかと思った。
カガリが指輪を外して、レクイエムの照準がオーブに合わされて…
本当にあれが最後になっていてもおかしくなかったんだ。

今…カガリの指にあの石が光っていて、こうしてキスを交わせることが、奇跡に思える―――






「俺の夢…聞いてくれる…?」

気が遠くなるくらいの永いキスを終えて、アスランは静かに言葉を紡いだ。
見方によっては泣きそうなほど切ない深緑の瞳。


「アスラン…?」


アスランのいつもと違う様子に、カガリの声も掠れたものになる。


「終戦後、オーブに戻ってきてからずっと考えてたんだ」

「え…」



「カガリと一緒に―――そうだな、80歳くらいまで生きて―――2人で…オーブの土になれたらいいなって…」



カガリは瞬きを忘れた。今、何と言ったのか。


プラントではなくオーブと言った。オーブの…土。



その壮大な言葉の意味は―――




「ア…スラ……」

気付けば、温かいものが琥珀の瞳から溢れていた。
ベッドの中でアスランの腕に抱かれている状態なので、その雫は頬を伝わずに目尻からシーツへ落ちる。

「この命が消えてからも、オーブに花を咲かせたいんだ。…カガリと」

「ば、かだ…お前」

「本気だから」

「そんな言い方…ふつう女は喜ばないぞっ…」

「そうだな、ごめん…」

アスランは口唇を寄せて苦笑しながら雫を吸い取った。
自分でも、こんな風にしか言えない不器用なところが情けないと思う。
けれど偽りない本当の気持ち。



「…私がお前の夢を叶えてやる」

ひとしきり涙を流したカガリが、顔を上げた。

「もう二度とお前が…誰もが戦場に出なくていい世の中にするのが私の役目だ。平和な世界で…一緒に80まで生きよう」


アスランの一世一代の告白の返事は、どうやらYesらしい。
それもすごく彼女らしい言い方で自然と顔が綻んだ。


「死ぬその瞬間は、カガリとキスしたいな」

…カガリの愛を感じながら天に召されたなら、どれだけ幸せだろうか。

「お前一人で先に死ぬつもりかよっ…//」

「いや、一緒にだよ」

溢れんばかりの愛しさに、アスランは力加減も忘れて強く抱き締めた。



「もう一回抱きたい…カガリ」

その甘い声と共に、再び肌の熱に溺れていく・・







「何なら、キスだけじゃなくて…こうやって繋がりながら死ぬのなんてどう?」

「はぁ!?おっおま…何言って…!// ていうか80になってもするつもりかよ!?//」

「え、しないのか?」

カガリなら絶対80歳になっても可愛いのに―――


「普通に考えてできるわけないだろバカッ!!///真顔で言うな!」

「…俺はできるけど」

(こ…こいつなら本当にできそうな気がする…;)

「お前はできても私は生物学的にムリだッ」


「じゃあ一緒に寝ててもずっと横で我慢してないといけないのか?そんな老後…いやだ俺」

「そんなこと言われても…!お前モテるんだから他でやれよ!//」

「他でって…酷いな……」

勢いとはいえ、愛する人からそんなことを言われて傷つかないはずがない。
しかもプロポーズ(?)の直後で愛を確かめ合ってる最中なのだ。


アスランは表情も下半身も落ち込んでしまい、カガリは自分の失言に気付いた。


「あ、ち違う!ゴメンその…、そういう意味じゃなくてっ//言葉のあやっていうか…;」

「……」

「えっと…!わっ私も、限界までは頑張って付き合うから…!//その、他の人は抱かないで……」


カガリの可愛い言葉でみるみるうちに元気を取り戻したアスランは、満足そうに微笑んで抱き締めた。

その言葉も反則だな…。
天然で殺し文句を言うカガリにはやっぱり敵わない。



世界一優しいキスをくちびるに贈って…心を込めて囁く。



「…カガリ以外抱いたりしないよ」



16歳のファーストキスから80歳の最期のキスまで

一生、君だけだから。






END

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