小説1

□Kiss Mark
1ページ/1ページ



「だめ…だってばアス…!これから会談…っ」

「うん……あと少しだけ」

荒い息の篭もる資料室。

狭い棚の間に入り込み、深いキスがさらにエスカレートしていくところでカガリはストップをかけた。
もう約束の時間まで20分もないというのに、アスランは首長服の下にまで手を伸ばしてくる。

「ぁ、んっ……こら…!」

「だってやっと視察から帰ってきて…2週間ぶりだし…」

会いたかった…と切なげに囁いて、アスランは愛する人を強く抱き締めた。

オーブ軍のトップにいるアスランは、仕事でオーブを離れることも少なくないのだ。
久しぶりの逢瀬に加速していく熱を、カガリの叱咤によってなんとか押し込めた。…もちろん交換条件付きで。

「じゃあ今夜…いい?」

「う…、ん//」

「約束な」

嬉しそうに言いながら、カガリの胸元に口唇を落として。
甘い痛みがしたのと同時に残る…約束の刻印。カガリは照れくさそうにそれを見つめた。


・・昔は、この朱い痕が何なのかさえ知らなかった―――






【Kiss Mark】






それは、アスランとカガリが2度目の夜を過ごした翌日だった。

『カガリ…?なんか、首のところ朱くなってるけど…!?』

孤児院のソファーで姉弟水入らずの時間を過ごしていたとき、キラは信じられないようなものを見たように言った。
海岸ではアスランとラクスが子供達と遊んでいる。

『え、首??』

カガリは不思議そうに近くの手鏡を取って覗き込んだ。

『ほんとだ。やだな、もう虫の季節かぁ。寝てる間に刺されたのかな』

『………』

『…キラ?』



キラはじっと探るようにカガリを見つめた後、大きく息を吐き出した。

『……なんだぁー!そうだよね、虫に決まってるよねっ。もう僕、恐いこと考えちゃったじゃない〜!!』

『? 恐いこと??』

(…カガリのこの様子だったら大丈夫だね。アノ痕なら真っ赤になってどもるに決まってるし…)

『何か言ったか?』

『ううん!何でもない♪』

女神ような自分の片割れが、すでにアスランの手篭めにされているなどあってはならない事だ。
ただでさえ医務室のキスを見たときは、本気で眩暈がした…。

(もしキスマークだったなら…アスランを生かしておかないよ)
とキラは心の中で付け足した。

―――こうしてアスランは、カガリが疎いおかげで辛うじてキラの処刑を免れたのだった。





******


「わ、私も……その、いいか?//」

「ん?」

約束のしるしを残して資料室を出ようとしたとき、カガリはアスランの袖をくいっと引っ張った。


……あの頃は何も知らなかったけど…今はこの痕がすごく愛しい。
他でもないアスランが与えてくれるものだから―――

カガリはアスランのインナーをはだけさせて、首の付け根にちゅっと吸い付いた。

「カガ…!//」

「私だって、寂しかったんだから…な…//」

「………っ…」

言いようもない感動に襲われ、アスランは言葉を無くした。

「ほっほら行くぞ!///」


照れ隠しのように去ろうとするカガリの腕を、今度はアスランが掴む。


「やっぱりちょっと…我慢できない」

「へっ?」


アスランがギリギリのところで保っていたものは、いとも簡単に崩れ落ちたのだ。



カガリの躰を壁に押し付け、アスランは意味ありげに腰のあたりを撫でた。
熱い息を彼女の耳元に吐き出して…


「えっ、ちょ…っアスラン!?」

「大丈夫。たまってるから、多分そんなに長く持たないし…」

「た、たまっ…///なにが大丈夫だッ!!」

「心配しなくても会談の時間までに終わるってこと」

アスランは男として実に情けないことを口にしているのだが、とにかく感じ合いたい一心だった。
禁断症状によって頭のネジがいくつか外れてしまったような。

軽くパニックしているカガリの下を脱がせ、ちらっと時計を見て自らのベルトを緩め始める。
―――あと15分。


「力抜いてて、カガリ…」

「え、えっ…えええ///」


彼女の右腿を持ち上げて…張りつめた肉棒を宛てがう。
嬉しいことに、カガリのそこも準備ができている状態だった。


奪うようなキスをしながら、アスランは吐息も躰も交わらせた。




******


その夜。
お風呂から上がったばかりのカガリの元に、プラントのキラから通信が入った。

『カガリ、元気? そっちは変わりない?』

「うん大丈夫だぞ! 久しぶりだなっ」

モニター画面の向こうにいる双子の弟は、全く変わっていない。
ザフトの白服姿ももう見慣れたものだった。

そうしてしばらくお互いの近況などを話していると、キラはカガリの鎖骨の下にとんでもないモノを見つけた。

『カガリ…それ…っ!!!』

バスローブから覗かれた胸元には、よく見れば小さな朱い何かが…。
資料室での行為に留まらず、つい先ほどまで“今夜の約束”を果たしていたため、その数は量産されていた。

「あっ///」

『かが……り……』

「ここここれは、そのっ…////」

『―――……』

キラは、何よりカガリのこの反応にダメージを受けた。
最愛の姉が女になったという事実を突きつけられたのだ。(純潔だと信じていた)


やっぱり…オーブに残ってアスランを監視しておくべきだった―――!!


『ア〜ス〜ラ〜ン〜〜〜ッッ!!!!』




その頃、オーブの軍本部では至極満足そうに仕事をする准将の姿があった。

無人の彼の自室には、夜明けまでキラからのコール音が鳴り響いていたのだった。






END

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ