小説1
□Kiss Mark
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「だめ…だってばアス…!これから会談…っ」
「うん……あと少しだけ」
荒い息の篭もる資料室。
狭い棚の間に入り込み、深いキスがさらにエスカレートしていくところでカガリはストップをかけた。
もう約束の時間まで20分もないというのに、アスランは首長服の下にまで手を伸ばしてくる。
「ぁ、んっ……こら…!」
「だってやっと視察から帰ってきて…2週間ぶりだし…」
会いたかった…と切なげに囁いて、アスランは愛する人を強く抱き締めた。
オーブ軍のトップにいるアスランは、仕事でオーブを離れることも少なくないのだ。
久しぶりの逢瀬に加速していく熱を、カガリの叱咤によってなんとか押し込めた。…もちろん交換条件付きで。
「じゃあ今夜…いい?」
「う…、ん//」
「約束な」
嬉しそうに言いながら、カガリの胸元に口唇を落として。
甘い痛みがしたのと同時に残る…約束の刻印。カガリは照れくさそうにそれを見つめた。
・・昔は、この朱い痕が何なのかさえ知らなかった―――
【Kiss Mark】
それは、アスランとカガリが2度目の夜を過ごした翌日だった。
『カガリ…?なんか、首のところ朱くなってるけど…!?』
孤児院のソファーで姉弟水入らずの時間を過ごしていたとき、キラは信じられないようなものを見たように言った。
海岸ではアスランとラクスが子供達と遊んでいる。
『え、首??』
カガリは不思議そうに近くの手鏡を取って覗き込んだ。
『ほんとだ。やだな、もう虫の季節かぁ。寝てる間に刺されたのかな』
『………』
『…キラ?』
キラはじっと探るようにカガリを見つめた後、大きく息を吐き出した。
『……なんだぁー!そうだよね、虫に決まってるよねっ。もう僕、恐いこと考えちゃったじゃない〜!!』
『? 恐いこと??』
(…カガリのこの様子だったら大丈夫だね。アノ痕なら真っ赤になってどもるに決まってるし…)
『何か言ったか?』
『ううん!何でもない♪』
女神ような自分の片割れが、すでにアスランの手篭めにされているなどあってはならない事だ。
ただでさえ医務室のキスを見たときは、本気で眩暈がした…。
(もしキスマークだったなら…アスランを生かしておかないよ)
とキラは心の中で付け足した。
―――こうしてアスランは、カガリが疎いおかげで辛うじてキラの処刑を免れたのだった。
******
「わ、私も……その、いいか?//」
「ん?」
約束のしるしを残して資料室を出ようとしたとき、カガリはアスランの袖をくいっと引っ張った。
……あの頃は何も知らなかったけど…今はこの痕がすごく愛しい。
他でもないアスランが与えてくれるものだから―――
カガリはアスランのインナーをはだけさせて、首の付け根にちゅっと吸い付いた。
「カガ…!//」
「私だって、寂しかったんだから…な…//」
「………っ…」
言いようもない感動に襲われ、アスランは言葉を無くした。
「ほっほら行くぞ!///」
照れ隠しのように去ろうとするカガリの腕を、今度はアスランが掴む。
「やっぱりちょっと…我慢できない」
「へっ?」
アスランがギリギリのところで保っていたものは、いとも簡単に崩れ落ちたのだ。
カガリの躰を壁に押し付け、アスランは意味ありげに腰のあたりを撫でた。
熱い息を彼女の耳元に吐き出して…
「えっ、ちょ…っアスラン!?」
「大丈夫。たまってるから、多分そんなに長く持たないし…」
「た、たまっ…///なにが大丈夫だッ!!」
「心配しなくても会談の時間までに終わるってこと」
アスランは男として実に情けないことを口にしているのだが、とにかく感じ合いたい一心だった。
禁断症状によって頭のネジがいくつか外れてしまったような。
軽くパニックしているカガリの下を脱がせ、ちらっと時計を見て自らのベルトを緩め始める。
―――あと15分。
「力抜いてて、カガリ…」
「え、えっ…えええ///」
彼女の右腿を持ち上げて…張りつめた肉棒を宛てがう。
嬉しいことに、カガリのそこも準備ができている状態だった。
奪うようなキスをしながら、アスランは吐息も躰も交わらせた。
******
その夜。
お風呂から上がったばかりのカガリの元に、プラントのキラから通信が入った。
『カガリ、元気? そっちは変わりない?』
「うん大丈夫だぞ! 久しぶりだなっ」
モニター画面の向こうにいる双子の弟は、全く変わっていない。
ザフトの白服姿ももう見慣れたものだった。
そうしてしばらくお互いの近況などを話していると、キラはカガリの鎖骨の下にとんでもないモノを見つけた。
『カガリ…それ…っ!!!』
バスローブから覗かれた胸元には、よく見れば小さな朱い何かが…。
資料室での行為に留まらず、つい先ほどまで“今夜の約束”を果たしていたため、その数は量産されていた。
「あっ///」
『かが……り……』
「ここここれは、そのっ…////」
『―――……』
キラは、何よりカガリのこの反応にダメージを受けた。
最愛の姉が女になったという事実を突きつけられたのだ。(純潔だと信じていた)
やっぱり…オーブに残ってアスランを監視しておくべきだった―――!!
『ア〜ス〜ラ〜ン〜〜〜ッッ!!!!』
その頃、オーブの軍本部では至極満足そうに仕事をする准将の姿があった。
無人の彼の自室には、夜明けまでキラからのコール音が鳴り響いていたのだった。
END