小説1

□Morning Kiss
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「ぁ…やだ…っ、行かないで…」

「カガリ…」


精を全て出し切ってアスランが引き抜こうとしたとき、カガリは思わずその肩を掴んだ。

今夜は執務室のソファーで…切ないほどに優しい行為だった。


カガリは今日の仕事を終えたところだったが、アスランはこれから朝まで軍務がある。
オーブ軍の准将という立場では、軍務を怠るわけにはいかない。…2人の未来のためにも。

「あ、ごめん…。行って……」

アスランの困ったような顔を見て、自分の言動の浅はかさに気付き、カガリは目を逸らした。


バカだ。朝まで一緒に…なんて、そんなことできるわけないないのに…
アスランがあんな風に優しく抱くから―――


「……大丈夫、まだ少し時間あるよ。じゃあ、今度は――――」


翡翠の瞳は柔らかく微笑んで。その先の言葉は、熱いキスの中に…消えた。






【Morning Kiss】







16歳、初めてアスランの全てを知った。

まだお互い未発達の身体を夢中で重ねて…
あんなに余裕のないアスランも、切なそうに顔をゆがめるアスランも、初めて見た。
最初にあった恐怖は…あっという間に愛しさに変わった。

経験がないのだから、ドラマや小説のようにスムーズにいくはずもなく。
それでもキスは数え切れないくらい重ねて、拙い愛撫で想いを伝え合った…。




『ごめん…その、優しくできなくて…』

私は懸命に首を横に振って、アスランの胸に顔をうずめるしかできなかった。
なんだか胸がいっぱいで、出てくる言葉はアスランの名前だけ。


・・アスランが優しくないなんて、そんなことあるはずない。
こんなにも柔らかく包んでくれているのに。泣きそうなほど甘いキスをくれるのに。

アスランはあったかい・・・


その日は、朝まで大好きな腕の中にいて…起きたとたん優しいキスが降ってきた。

『おはよう、カガリ…』





「おはよう、カガリ…」

・・あの朝とタブるような声が聞こえる。
夢か現実かまだ把握できないまま、ちゅ…と軽く口付けられた。

はっきり目を開けると、自分が寝ているソファーの傍らにアスランがしゃがみ込んでいた。


「アス…ラン…」

「良かった…ギリギリ間に合ったかな」

「え…?」


アスランは昨夜の軍服のまま…だが、緑のインナー姿だった。
上着は、自分の身体の上に掛けられている。全裸のままの身体の上に。


「あれ…、え??///」

アスランはというと、ひどく満足そうにしている。

「覚えてないんだ、カガリ。引き止めた後のこと」

「……あ。」




“まだ少し時間あるよ。じゃあ、今度は――――”


あのあと確か…気がおかしくなるくらい激しくされて、意識を飛ばされた…。

それからの記憶はない。


もしかして、私が気を失ってる間に仕事に行って、目が覚める前に戻ってきた……!?
寂しいと…感じる暇もないように――――



「…………ばかアスラン。」


嬉しいのに、恥ずかしくて素直な言葉がでてこない。
この上着のせいだ。アスランの香りがするから、一晩中アスランの腕の中にいたような感じがする。

…なんか悔しい。


「有能って言ってほしいな。カガリの意識が戻るまでにちゃんと仕事終わらせたんだから」

「だからって気絶させることないだろ…っ//」

「あんな可愛いこと言うカガリが悪い…」


頭を撫でられて、また寄せられる口唇。
軽くするのが定石の「おはよう」のキスは、すぐに深くなっていった。


こんな……目が眩むような朝が毎日迎えられたら―――





「でもそうか…カガリは激しい方が好きなのか」


ふと遠くを見つめ、妙に納得したような口調でアスランは言った。


「へっ?」

「だってゆうべ…ゆっくりしたら、物足りないような目で引き止めるし」

「―――んな゛っ…!!///ち、ちち違う!!あれは…っっ!!!」

「そうならそうと早く言ってくれればいいのに。なんかこの4年間…損した気がする」


損と言ったアスランの瞳は、冗談ではなく本気だった。


「だから違うっっ!!!なにバカなこと言ってんだ!!///」

「まぁ、これから頑張って取り返せばいいか。……とりあえず、」

「違うってばッ!…わわ//どこ触って…!!」

「朝するのって…また別の興奮があるよな…」



―――2人が「おはよう」のキスを毎日交わせるようになるまで、あと少し・・






END

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