小説1
□海の向こう 後編
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いつからだっただろう。
無邪気に笑う琥珀色の瞳が、特別になったのは。
一緒にいたい、触れたい、口唇を重ねたい
そう思えるのはカガリだけだった。
家でも学校でも、気付けばいつもカガリのことばかり考えている。
欲しくて欲しくて仕方なかった・・。
―――あの日、俺はもう限界だったのかもしれない。
教室に残ってカガリと話していると、いつの間にか誰もいなくなっていて。
なぜかカガリはだんだんしゃべらなくなってしまった。
頬は朱く染まって、落ち着きがない琥珀の瞳。
俺の全てを奪われるような可愛さだった。
もしかしたら、カガリも少しは俺のことを想ってくれているのかと。
そんなことが頭をチラつけば
もう・・・衝動を止められなかった。
ずっと、どんな感触なんだろうと思い描いていたカガリのくちびる。
信じられないほど甘くて柔らかくて…、俺は一瞬で堕ちた。
カガリが微かに震えているのを感じて少し口唇を離すと、彼女はたちまち俯いてしまった。
嫌だったのだろうか、とも思ったけど、俺はどうしてももう一度だけ口づけたくなった。
朱く染まった頬にふれると――――カガリは走って教室を出ていってしまった―――
あのとき
あのとき、俺がカガリを捕まえていれば。
ちゃんと想いを伝えて…この腕に閉じ込めていれば。
あんな忌まわしいことは起きなかったんだ・・・
いくら後悔しても尽きることのない後悔に、俺はあれから一歩も踏み出せずにいる。
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