小説1

□海の向こう 前編
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高校に入って2度目の夏服は、もう着慣れたものだった。
夏休み間近。
楽しみでも何でもない長期休暇を目の前に、カガリの心は翳る一方だった。




バスの扉が閉まって、エンジン音と共に動き出す。
アスランとカガリは、いつものように一番後ろの座席に並んで座った。

海岸線沿いを走る車内は、通学・通勤時間真っ只中にも関わらず、あまり人はいなかった。
この町ではほとんどの人は電車を利用するからだ。
バスは町の隅をぐるっと遠回りするような形で走るため、不便なこと極まりないのだった。



「アスランの高校は、もう期末テスト返ってきてるか?」

人一人分の間隔を空けて隣に座るアスランに、カガリは話しかけた。
学校指定のカバンも、制服も、今の2人は異なっていた。

彼が締めている青を基調としたストライプのネクタイは・・見るたびに遠く感じる。


「ああ、でも後は夏休みだし気が楽だよ」

「私は全っ然ラクじゃない!1学期の締めに球技大会があるんだ;」

「ははっ。カガリは運動神経いいくせにそそっかしいところがあるからな」

片眉を下げて笑うアスランに胸が温かくなったけど、恥ずかしくてつい可愛くない返事をしてしまう。

「うるさいな、もう!」

「何に出るんだ?」

「バレーボール。言っておくが、女子校の闘いは怖いんだからな」

「怖いって??」

「…まぁ、アスランが思ってるような大人しいものじゃないってことだよ;」

「へー(?)」


相変わらず女子のことに関して疎いアスランに、少し安心感を覚える自分がいた。




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