小説1

□quartet
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「あの…実は、わたくしたち……」

「付き合うことになったんだ」


照れくさそうに笑い合う、キラとラクス。


「―――え!?」


カガリはただ目と口を開けたまま固まることしかできず、
アスランは二、三度瞬きしてから優しく祝福の笑みを贈った。


仲良し4人組の構図が変わった瞬間だった。





【quartet】





4人が出会ったのは、高校1年の春。
同じクラスで、部活も同じだったのがきっかけだった。
入部した弓道部には、他に一年生部員が入らなかったことも要員の一つだったかもしれない。
自然と4人でいることが多くなって、毎日のように笑ってふざけ合って過ごした。


その年の夏、3年生たちが部活を引退すると、部員はカガリたち4人だけになってしまった。
2年生部員が一人もいなかったのだ。
本来なら部員数が規定の数を達していない部活は廃部―――となるが、カガリたちは個人戦でそれなりの結果を出して、なんとか存続を認めてもらえた。


―――ただし、条件が一つ。
部室は一室で男女共同とすること、しかも部室棟が満室のため、今では使われてない用具倉庫を使えと。


4人はほこりまみれの倉庫を目の当たりにして一瞬言葉を失ったが、掃除をして要らないものを撤去すると、20畳ほどあって意外に広かった。
縦長のロッカーで間を仕切れば、男女それぞれの着替えも問題なくできる。
あとは長机を持ってきて、イスを4つ置いて。
そこはあっという間に、快適なお気に入りの空間となった。




そうして2年生になり、アスランとキラは理系クラス、カガリとラクスは文系クラスに分かれてしまったが
それでも4人の関係は変わらなかった。
新入部員は入らず、4人だけのまま。
お昼はみんなで部室に集まって食べて、部活が終われば駅まで一緒に帰る。


カガリは、そんな毎日が楽しくて仕方なかった。
ずっと変わらないと思っていた。



―――しかし、2年の梅雨の終わり。
4人の中の2人が“恋人”と変化を遂げたのだ。






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