小説1
□巡査部長イザーク・ジュール番外編V
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「瓶ビールもうワンケース追加してー!」
「カラオケあるんでしょー?歌おうよ〜」
皆すっかり酒が回って宴会は盛り上がってきた。
けれども俺はクリアな頭で日本酒をちびちび飲みながら、なおもアスランの動向を目で追っていた。
一瞬たりとも気が抜けないのだ。
うかつに酔っぱらうこともできない。
(この時点で俺の慰安旅行は台無しになっているような気がするのだが…)
そこに水割りをもったダコスタが、フラフラと俺に近づいてきた。
「イザーク先輩は、ほんっとアスラン先輩が好きなんですねぇ〜」
ぶっっ!!!
俺は思わず日本酒を吹き出しそうになった。
なんだとぉぉぉぉぉ
この俺がアスランを好きだとーーーーーー!?
「な、なにを言っている貴様ッ!!」
「だってさっきからアスラン先輩ばかり見てるじゃないですか〜。アスラン先輩は奥さんのことばかり見てるのに〜」
なんて的外れなバカ発言だ!!
俺が今までどれだけひどい目に遭ってきたと思ってるんだ!!
俺はあの性欲全開男を見張ってるだけだーーーッッ!!
「ダコスタ!貴様どうやったらそんな風に見えるんだ!!刑事としてもっと観察眼を鍛えやがれ!!」
「切ない片思いですねぇ〜」
酔っ払いには何を言っても通じず、ダコスタはそのままフラフラと同期の仲間のところへ行ってしまった。
あいつ…ッ!!
旅行から帰ったら覚えておけよ…!!
絶対に仕事で忙殺してやる!!!!
―――そう激しく決意を定めたところで、俺はふと自分のスマートフォンの電池残量に気が付いた。
しまった、もう電池が切れかかっている。
先月買ったばかりでまだ電池の消費ペースに慣れていないのだ。
慰安旅行中だといっても…電池を切らせてしまうのは、なんだか落ち着かないな。
「いったん部屋に戻って充電してくるか……」
俺は荷物の置いてある部屋へと向かった。