小説1
□巡査部長イザーク・ジュール番外編U
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職場の飲み会はけっこうあるが、俺たち2人だけで飲みに来たのは久しぶりだった。
来たのはもちろん、俺たちの行きつけの居酒屋だ。
ちなみにかつて俺はここでアスランに絞め殺されそうになったことがある。(これも披露宴のスピーチで暴露してやった)
アスランは俺の誘いに黙ってついてきて、力を無くしたまま座敷に腰を下ろした。
俺が生ビールを2つ注文すると、憔悴しきった様子でやっと口を開く。
「……あ、すまない。ちょっとカガリに連絡させてくれ…。お前と飲んでくること言っておくから」
「ああ、そうだな」
こういうとき、こいつ本当に結婚したんだなと実感する。
既婚者にしか見られない光景だ。
アスランは携帯電話を取り出し、その場で話し始めた。
「カガリ、今日はイザークと少し飲んでから帰るよ。そんなには遅くならないけど、しっかり戸締りしておくんだぞ」
俺はおしぼりで手を拭きながら、アスランの電話が終わるのを待っていた。
ふむ…。なかなか良き夫らしい優しい口調だ。
これでカガリと喧嘩しているという線は消えたな。もともとそっちはあまり心配していなかったが…。
「あと…カガリ。あれ、終わった…?そうか…じゃあ明日の夜、約束だからな」
最後によく分からない会話をして、アスランは電話を切った。
別に俺は特に気にしなかった。
ここで店員がビールを持ってきて場は整った。
さあ、本題だ。
「…アスラン。貴様、なにか悩み事があるのではないか?」
「え…?」
「だから今日貴様を誘ったんだ。俺では力になれないかもしれないが…、言ってみろ。吐き出して楽になることもある」
俺はビールにはまだ手をつけず、真面目に話を切り出した。
もしアスランが酔わないと吐き出せないようなことなら飲んでからでも構わないが、まずシラフで聞くのが礼儀だろう。
「イザーク…」
アスランは縋るような目で俺を見つめてきた。
頼りにされるというのも悪くない。
既婚者の相棒は「はぁ…」と深い溜め息をついてから重い口を開いた。
「もう…5日もしてないんだ…」
「なにが」
「カガリがその、月のもので……5日も夫婦生活がないんだ…!!」
「……はぁぁっ!?」