小説1

□巡査部長イザーク・ジュール番外編U
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俺の相棒アスラン・ザラは今、ハツカネズミになっている。



ザフト警察署・刑事課所属の俺たちは…………ん?






「私すっごいファンなのっ!サイン貰えるかなぁ」

「私もCD全部持ってるー!声だけでも生で聴きたーい!」


ふと、廊下の方から女性署員たちの騒ぐ声が聞こえてきた。
俺はこういった黄色い声は好かんが、まあ今回は仕方なかろう。



「ついに明日ね!ラクス・クラインの一日警察署長!!」




―――そう。
明日はキラの嫁さんである歌手ラクス・クラインが、ザフト署で一日警察署長を務めるというイベントがあるのだ。


きっかけはアスランとカガリの結婚式。
ラクス嬢が親族だと知った“お祭り大好きバルトフェルド署長”がカガリに頼んで実現することになったらしい。

(人妻であり二児の母である女性に「嬢」を付けるのは失礼な話だがこれで通させてくれ、すまん)



しかし……なるほど。

今アスランが刑事課のデスクでハツカネズミと化しているのはこれが原因か。
嫁の親族が自分の職場にやってくるのだから、色々遣り辛いこともあるのだろう。


いや待てよ?
たしかラクス嬢はキラと違ってアスラン達の結婚に賛成していたはずだ。
あのシスコンキラを無言の圧力でねじ伏せたのは、まぎれもなく彼女で…。
それならアスランはそんなに悩む必要はないのでは?


ならば原因は他に…?
そういえば、こいつ…時々こうなることがあるよな。
こっちは仕事が山積みでそれどころじゃないから放っておいたが…。


徹夜明けでもカガリを襲う元気があるくらいだから(しかも職場で)仕事の疲れなどではないだろう。
カガリと喧嘩でもしたのか?

てっきり幸せいっぱいだと思っていたこいつでも、真剣に悩むことがあるのか――――



「アスラン」

俺は相棒の肩に手を置いて声をかけた。


「イザーク…」

「今日は久々に飲みにいかないか」





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