小説1
□巡査部長イザーク・ジュール
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「貴様、とっとと告白しろ!!」
「へっ……!?」
仕事帰り、2人で居酒屋に寄るなり俺はいきなり核心から入った。
だらだらと回りくどいことは好かん。
「交通課のカガリ・アスハに告白しろと言ってるんだ!」
「なっ…なななんでお前がそのこと……っ////」
まだ酒も飲んでないのにアスランは茹でダコのように真っ赤になった。
誰にも知られていないと思っているらしい。
一度でいいから自分の一日を客観的に見てみろ…。
「貴様は警察官だ。現役警察官がストーカー規正法違反で捕まるなんてマズすぎるだろう」
「ス…ストーカー!?そんな!俺はただ…」
「世のストーカー達はみんな決まってそう言うんだ」
「……(ガーン)」
カガリは鈍感だからきっとアスランの好意にはこれっぽっちも気づいていない。
だから本当に通報されるなんてことはないだろうが、
これくらい言わなければアスランは今の状況を打破できまい。
とにかく一刻も早くアスランに玉砕してもらって、「女は当分いらない」という決意のもと
仕事に意識を戻してもらうしかない。
少し酷かもしれんが、貴様のためだアスラン!
「けど告白なんて…多分向こうは俺のこと何も知らないのにそんなこと…」
「うちの署でお前を知らないヤツはいないだろう」
「名前と顔を知ってたとしても、まともに話したことないんだ」
「去年のバレンタインのチョコの数を忘れたか。お前に好意を持たれて嬉しくない女はいないぞ」
これは本当のことだった。
しかしあの色恋に疎いカガリだけは例外だと思う…とはあえて言わないでおいた。
まったく厄介な恋をしたものだ、俺の相棒は。
「そ…そうなのか…? でも俺告白なんて一体どうしたらいいのか…」
「そんなこと自分で考えろ」
「俺…その…、人を好きになったのも初めてで…」
「なにぃぃぃぃ!?」
衝撃の事実。
20代半ばの男が。
初めて人を好きになっただと!?
「………」
絶句してしまった。
この顔だったら寄って来る女は星の数だろうに。
俺だってこの歳になれば女性経験くらいある。
お前一体今までどんな人生を歩いてきたんだ…もしや童…ゴホン!
しかし…なるほど。
これであのフヌケ面とオクテな様子には妙に納得がいった。
こんなアスランを署の女性たちが知ったら一体どう思うのだろうか…。
それより目の前の問題だ。
この恋愛初心者を指導するのは、もしかして俺の役目なのか!?
なんかすごく頼りにされてるような視線が…;
…ええい!!
けしかけたのは俺だ。今さら引けない。
最後まで面倒みてやるしかない…!
「いいか、まず食事に誘うんだ。彼女の好きな食べ物を聞いたりして、少しずつ話を広げていくのが一般的だ」
「そうか…食事…なるほど」
「食事くらいならまず断られることはない(多分)。だから安心して行け」
「ありがとうイザーク、明日誘ってみるよ…!」
―――まさか、これがドツボに嵌まるキッカケになるとは思いもしなかった。