Red Line
□Red Line 第9話
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アスランからの調査依頼があった2日後の夜、早速ハイネは彼のマンションを訪ねた。
木曜の夜だった。
アスランから「必ず平日の夜に」と指定されているからだ。
外では誰に聞かれるか分からないため、調査報告はアスランのマンションで、ということが二人の間で決められていた。
そして―――報告は、書面やメールなどの痕跡が残るものではなく、口頭で。
カガリはもちろん他の誰にも知られないようにと、アスランは徹底していた。
「とりあえず、過去を遡る形でいこうと思ってな。11年前のヴィア・ヒビキの死から調べてみた」
「ああ」
その件については、アスランも思うところがあったため頷いた。
確か、転落事故―――
他殺や自殺の可能性も読み取れるものだったのだ。
そんなことカガリに聞けるはずもなくて後回しになっていたが。
「結論から言うと、他殺でも自殺でも精神疾患でもないようだ。当時の同僚に聞いてみたが、彼女は過労気味だったようでな」
「過労…?」
「ああ。働きづめで眩暈がして、職場の非常階段から落ちたということだ」
「………」
ハイネの話を聞いて、アスランは苦しげに目を伏せた。
つまり、転落死というより、ほぼ過労死―――
そうだ…。
カガリはいつも自分の身体を気遣ってくれていた。
『ちゃんと寝た…?』
『仕事、無理しないで』
あのカガリの心配そうな表情は、過労死した母親を思い出していたのだと、初めて知った。