Red Line
□Red Line 第6話
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9月に入って、週末の過ごし方はこれまでとは完全に変わった。
外出するのではなくアスランのマンションで一緒に過ごすことと、土曜の夜は泊まっていって日曜に帰ること。
歯ブラシや化粧品などのカガリ専用の物も、アスランの部屋には自然と増えていった。
「いま運動会の練習ばっかりで。こんなに陽に焼けちゃった」
リビングに座って、最初は身近な話題から。
カガリは焼けた自分の腕を見せ、それでもその表情に少しの不満も見られなかった。
「みんなかけっこするにも一生懸命で可愛いんだよ。もうすっごいパワー!」
…しかし、その純粋な笑顔を向けられた方は、つられて同じ表情になることはなく。
少し視線を外してから静かな声を出した。
「カガリは…どうして先生になろうと思ったの?」
「え、私?」
「何か理由があるなら聞きたいなって思って…」
「うーん…、やっぱりあの1ヵ月がきっかけかな…」
アスランの暗い想いに気づくことなく、カガリは素直に思い出しながら答えた。
「母が亡くなってアスハ家に入るまで、私1ヵ月間くらい児童養護施設に入ってたんだ」
「そのとき施設の小さい子の面倒見てて、母を失った悲しみが和らいだっていうか…。こういうの自分に向いてるって思って」
深緑の瞳をまっすぐ見つめながら、カガリは充実した笑みを向けた。
25年間いろいろあったけれど―――
今、好きな人に愛情をもらって…仕事も充実していて…、全てが満たされているのだ。
・・・今まで生きてきて、間違いなく一番幸せだと思う。
「教師になってほんと良かった!大変なこともあるけど、毎日楽しいよ」
「カガリは………ほんとに子どもが好きなんだね」
「うん!」
カガリが一点の曇りもない返事をすると、するりと、アスランの腕が伸びてきた。
「…わっ」
きつく、きつく抱きしめられる。
檻の中に閉じ込めて更に縛り付けるかのように。身体に食い込む腕。
アスランの顔は見えない。
「アス、ラン…」
「………っ…」
カガリの声が吐息と共に吐き出された瞬間、自由を奪われた身体はカーペットに押し倒されていた。