風薫る花

風薫る花 <第5話>
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カガリの両肩をつかんでいるキラの手が震えだした。


ラクスだ。
間違いない。

生きてた・・ラクスが――――



失踪の経緯はわからないけど…今まで全く連絡がなかった理由が、やっとわかった。

何の前触れもなく姿を消して、暗号の類さえも届かなくて…
もう生きている望みも薄かった。



「…お前、サツキの知り合いなのか? 記憶喪失になる前のサツキを知ってるのか?」

「……さっきの歌…あの歌はラクスが作った歌なんだ…。他に唄える人はいない」

「“ラクス”…それが本当の名前なのか…」


カガリはここで初めて、友人の名前を知った。


「ラクスは今どこにいるの? 今すぐ会いたいんだ…!」

それは、カガリがアスランの居場所を問い詰めたときと同じだった。
キラにとってラクスに繋がる唯一の手がかりが、カガリなのだ。

「お前な、私にはアスランの居場所を教えてくれないくせに…;」

「お願い!ラクスは僕の恋人で…大切な人なんだっ!!」

「…!」


「この1年…ラクスの生死さえ分からなくて、目の前が真っ暗だった…っ」

キラの目には涙がにじんでいた。

「やっと…やっと生きてることが分かったんだ……お願いだから会わせて…!!」


その言葉からも、キラの真剣な気持ちが伝わってくる。
嘘偽りがないことも。


「……わかったよ。案内してやる」

「!! ありがとう…!」



“――――歌を、唄いませんか…カガリさん”

カガリは静かに涙を流していた彼女のことを思い出していた。
“失くした大切なもの”とは、このキラなのだと…なんとなく感じた。


「サツキ…いや、ラクスのためだからな。」


カガリは小さく付け足し、キラは申し訳なさそうに笑った。




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