風薫る花
□風薫る花 <第5話>
2ページ/13ページ
カガリの両肩をつかんでいるキラの手が震えだした。
ラクスだ。
間違いない。
生きてた・・ラクスが――――
失踪の経緯はわからないけど…今まで全く連絡がなかった理由が、やっとわかった。
何の前触れもなく姿を消して、暗号の類さえも届かなくて…
もう生きている望みも薄かった。
「…お前、サツキの知り合いなのか? 記憶喪失になる前のサツキを知ってるのか?」
「……さっきの歌…あの歌はラクスが作った歌なんだ…。他に唄える人はいない」
「“ラクス”…それが本当の名前なのか…」
カガリはここで初めて、友人の名前を知った。
「ラクスは今どこにいるの? 今すぐ会いたいんだ…!」
それは、カガリがアスランの居場所を問い詰めたときと同じだった。
キラにとってラクスに繋がる唯一の手がかりが、カガリなのだ。
「お前な、私にはアスランの居場所を教えてくれないくせに…;」
「お願い!ラクスは僕の恋人で…大切な人なんだっ!!」
「…!」
「この1年…ラクスの生死さえ分からなくて、目の前が真っ暗だった…っ」
キラの目には涙がにじんでいた。
「やっと…やっと生きてることが分かったんだ……お願いだから会わせて…!!」
その言葉からも、キラの真剣な気持ちが伝わってくる。
嘘偽りがないことも。
「……わかったよ。案内してやる」
「!! ありがとう…!」
“――――歌を、唄いませんか…カガリさん”
カガリは静かに涙を流していた彼女のことを思い出していた。
“失くした大切なもの”とは、このキラなのだと…なんとなく感じた。
「サツキ…いや、ラクスのためだからな。」
カガリは小さく付け足し、キラは申し訳なさそうに笑った。
.