風薫る花
□風薫る花 <第7話>
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もう二度と会えないと思うと
余計に想いは募った
「あ……雨」
東の塔からは、マルキオさんの家がある方角が見えた。
空いっぱいに広がる雨雲。
…あいつはもう、ZAFTに戻ったかな。
私を殺す任務にでも戻ったかな。
まだ私の顔は割れてないとは思うけど…それも時間の問題かもしれない。
やっぱり驚くかな、あいつ。
キラとラクスは…どうしてるだろう。
でもあの2人なら心配ない気がする。
あんなに強く想い合って、お互いの存在が全てで――――
…私のは、それが全部一方的なんだ……
「アスラン……」
【風薫る花 第7話】
「雨…やまないね」
「…キラ」
一人でテラスに出ていたアスランに、後ろからキラが声をかけた。
アスランがこのマルキオ邸に来た日から降り続いている雨は、今日で3日目だった。
≪あれ≫がある限りZAFTはいつでもアスラン達の居所を特定できるのだが、今は潜伏するよう命が出ているため大丈夫だと判断し
マルキオ邸に留まっている。
ZAFTからの通信機を無視したりしない限り、アスラン達が捜索されることもない。
「まるで君の心を映してるみたい」
「……どういうことだ?」
「そのまんまだよ…」
この3日間、キラはほとんどアスランに話しかけることができなかった。
話しかけられる雰囲気ではなかったのだ。
その代わりキラはラクスとじっくり話し合い、アスランの心情に関しても意見を交わしていた。
…アスランが何を望んでいるのか。カガリの想いは。
自分たちができることは、真実を話し、背中を押すことくらいだと…。
「カガリのこと考えてたんでしょ?」
「…そんなことはない」
「あ、僕きみの嘘初めて聞いたかも」
笑って空気を和らげた後、キラは言葉を続けた。