silver soul
□貴方を売るくらいなら、
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痛い。
殴られた痣が変な熱を持ってジンジンと痛み、
切り付けられた傷はピリピリと考える集中力を奪う。
手、足を縛られて身動きが取れない今
自分を保つために、考えろ。考えるんだ。
「おい、吐く気になったか?どこの差し金だ」
密偵の任務で、攘夷志士に紛れ込もうとして
しくじった。
当然彼らは俺が何処から来たとかそういう情報を欲しがる。
だけど。吐くわけにはいかない。
真選組には大切な皆がいるんだ。監察の皆、隊士の皆、局長、沖田隊長
そして、副長。
ドカッ、と音がして。また自分が殴られたことの気づく。
「吐けよ・・吐いて楽になっちまえ・・・」
俺を拷問している男は、その汚い顔にさらに汚い笑顔を張り付かせて言う。
そして、近づいてくる。
間合いを見計らって、脚どうしが縛られているだけで膝をつかえば動かせる足を使って
男を蹴る。
情報なんて、やるものか。
皆を売るくらいなら、いっそのこと舌を噛み切って死んでやる。
男は、汚い笑顔を浮かべていた顔に今度は怒りを滲ませて。
力いっぱい、殴られる。
同じ殴るのでも、副長とはずいぶんちがう。
こんな状況でもそんなことを思う自分に、自嘲気味に笑みが零れた。
カタン、と音がした。
天井からだと思う。仕事柄、そういうときは耳が利く。
そして、人の気配がある。
ああ、やっと討入りなんだ。
そう思ったら、いままで張り詰めていた意識がすっかり飛んでしまった。