D.G

□来年までの約束
1ページ/2ページ

『ごめん、無理かもしれない・・・』

受話器越しに聞いた声。
予想はしていたけれど、結構辛いな。なんて思うのはやっぱり思考が何かおかしいんだろうか。

ティキとの電話。

仕事をしているティキは、学生の俺と違って忙しい。
とはいえ、親の会社なので結構コネもあるみたいだけど
本人の実力もまぁ確かなものなので誰も何も言わないらしいが。

だから、クリスマスを一緒に過ごせないのだってありえない話じゃない。


ティキと出会って、もうすぐ一年。

出合ったのもクリスマスだった。

忘れもしない、去年の12月24日。
大学受験前の俺は結構荒んでた気がする。
周りの過度の期待と重圧に押しつぶされそうで。
勉強が嫌いなわけじゃないし、出来ないわけでもない。
むしろ、できるか出来ないかで言えば出来るほうに位置づけすることは十分可能だろうし。
でも、その分だけ周りの期待は大きくなる。
ウチはじじいと2人暮らしだからお金を掛け捲るわけには行かない。
周りには医大とか勧められたけど、そんなお金のかかる道は選べない。
それに、国内でも有数のレベルの高い大学に行く価値も見出せなかった。
なにせ、何を自分がしたいのかわからなかったし。
かといって、周りに進められるがままに人生を歩む気なんてさらさら無かった。

そんな重圧が嫌になって、なんとなく町をブラついてたのが去年のクリスマスイヴ。

恋人達がやさしく寄り添うこんな日に、自分は一人で。
悩むに悩んで煮詰まりすぎてどうにかなりそうで。
この場所にいるのが酷く滑稽に思えた。

町の真ん中の広場にあるツリーの前で、電飾に艶やかに飾られたそれを見続けることはや1時間くらい。
自分の中では時間の経過なんて二の次で。
その目はツリーを見ていたのか、自分の未来を見ていたのか。
今思えば両方だったようにも思える。

そんな時、声をかけてきたのがティキだった。

初めは、傍から見れば不審すぎる行動を見かねて声をかけたのかと思ったが
どうやら違うらしい。

話を聞けば、後ろ姿が知り合いに似ていたらしい。
声をかけるタイミングを計っているうちに別人だと気づいたらしいのだが、なぜか俺に見惚れた、とか言ってたけど。

あぁでも、今思えばあの時。
悩んでいたからこそティキに逢えたんだなって思うから、周りの重圧は結構役に立ったのかも。
たぶん、不本意な役立ち方だと思うけど。

その後、当たり前のように惚れちゃった俺と
最初見たときから惚れてた、と公言するティキとのお付き合いが始まったんだ。

ティキに悩んでた内容を洗いざらい話したら、
「ラビのやりたいことが出来る学校を選べばいいよ」
なんていってくれたものだから、今まで悩んでたのが嘘みたいに消えていった。
だって、ティキのコトバは影響力が他とは比べ物にならない。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ