darkness
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蛇にそそのかされたイブは禁断の果実を口にする。
禁断の果実を口にしたイブはその実をアダムへと与える。
そして二人は知性を得て罪を犯し、神の愛をはねのけた。
つまるところ、イブこそが原罪の原点なのか。
「―……っ」
大きく跳ねた心臓。
ドクドクと脈を打つ鼓動を感じながら、小さく吐息を零した。
同時に自身の背中へと回された腕の力が緩む。
「…どうせなら…」
「!」
自分の胸に埋めていた顔を女は上げる。
同時に交差する二対の琥珀の瞳。
そっと腕は離れ、彼女は目をそらしながら俯いた。
「楽園なんて、初めからなければ良かったのよ…」
「………!」
「知性も理性も記憶も感情も総て…皆無だったなら…良かったのに…」
「何を…」
「禁断をするものを作らなければ良かったのよ…」
「……姉、さん…」
「―サソリ、」
「!」
不意に合わせられた瞳。
跳ねた鼓動に奇妙な感情が波紋する。
「学校、遅れるでしょう?
早く行かなくちゃね。」
「!」
「…いってらっしゃい…」
さも当然のように。
浮かべた笑顔は家族≠ノ対するモノ。
それに違和感がよぎる。
…昔は大好きだったハズのその笑顔が、何故か無性に嫌でたまらなかった。
そして波紋し続ける感情に灯をともした。
「………っ!?」
「………」
いつかと同じように、唇には柔らかい感触。
見開いたのは琥珀の瞳。
けれど、今驚きを隠せずに瞳を見開くのは自分じゃない。
一瞬だけ触れた唇をすぐに離し、背中を向けた。
「早く治せよ…」
「!!」
彼女は目を見開いたまま宙を凝視していた。
その姿を視界の片隅に収めながら、早足で部屋を出る。
パタンという空間を遮断する音が響くと同時に、思わず自身の唇に触れた。
「おかしいだろ…
こんなの…」
そうだ。おかしい。
なのに何故。
いつか姉が言った言葉が脳裏をよぎる。
自分たちは姉弟である前に男≠ニ女≠セと。
「………っくそ…っ」
罪の味は如何なるものか。
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後書き
ラストをどうするか非常に迷ってます(笑)
20090711