darkness


□6
1ページ/1ページ






蛇にそそのかされたイブは禁断の果実を口にする。


禁断の果実を口にしたイブはその実をアダムへと与える。


そして二人は知性を得て罪を犯し、神の愛をはねのけた。





つまるところ、イブこそが原罪の原点なのか。









「―……っ」


大きく跳ねた心臓。
ドクドクと脈を打つ鼓動を感じながら、小さく吐息を零した。
同時に自身の背中へと回された腕の力が緩む。




「…どうせなら…」

「!」



自分の胸に埋めていた顔を女は上げる。
同時に交差する二対の琥珀の瞳。
そっと腕は離れ、彼女は目をそらしながら俯いた。





「楽園なんて、初めからなければ良かったのよ…」

「………!」

「知性も理性も記憶も感情も総て…皆無だったなら…良かったのに…」

「何を…」

「禁断をするものを作らなければ良かったのよ…」

「……姉、さん…」

「―サソリ、」

「!」




不意に合わせられた瞳。
跳ねた鼓動に奇妙な感情が波紋する。





「学校、遅れるでしょう?
早く行かなくちゃね。」

「!」

「…いってらっしゃい…」





さも当然のように。
浮かべた笑顔は家族≠ノ対するモノ。
それに違和感がよぎる。

…昔は大好きだったハズのその笑顔が、何故か無性に嫌でたまらなかった。

そして波紋し続ける感情に灯をともした。

























「………っ!?」

「………」









いつかと同じように、唇には柔らかい感触。
見開いたのは琥珀の瞳。

けれど、今驚きを隠せずに瞳を見開くのは自分じゃない。

一瞬だけ触れた唇をすぐに離し、背中を向けた。






「早く治せよ…」

「!!」






彼女は目を見開いたまま宙を凝視していた。
その姿を視界の片隅に収めながら、早足で部屋を出る。

パタンという空間を遮断する音が響くと同時に、思わず自身の唇に触れた。





「おかしいだろ…
こんなの…」





そうだ。おかしい。
なのに何故。

いつか姉が言った言葉が脳裏をよぎる。

自分たちは姉弟である前に男≠ニ女≠セと。








「………っくそ…っ」











罪の味は如何なるものか。





==========
後書き

ラストをどうするか非常に迷ってます(笑)

20090711
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ