企画棚

□じじい×2と羊一家の話
3ページ/3ページ



―そして歴史は繰り返す―


「………」
この日、貴鬼は不機嫌そうな表情で、牡羊座の聖衣の手入れを行っていた。

「…どうしたというのだ?貴鬼よ」
その様子を目の当たりにしたハクレイは、思わず貴鬼に声を掛ける。

「あっ、ハクレイ様……」
貴鬼は一瞬、驚いたようにハクレイを見やるが、すぐに手元へと視線を戻してしまう。

「…別に…何でもありません……」
「そのような事をして何でもない訳なかろう?」

何せ、ずっとヘッドパーツをごしごしと磨いていたのだ…お陰で、ヘッドパーツはぴかぴかだ。

「わしで良ければ、話し相手になるぞ?」
「…その……」
ごとり、とヘッドパーツを置き、貴鬼は深いため息をつく。

「…ムウ様もシオン様も、羅喜を甘やかしすぎではないかと思って……」
貴鬼は、数分前の出来事を思いだしながら呟くように言った。


『羅喜、新しい髪飾りを買ってきたぞ』
『わ〜!!ありがとうなのだ、シオン様!!』
『では私が髪を結いましょう。おいで羅喜』
『はいムウ様!!』


「……はぁ」
弟子の羅喜を膝の上に乗せ、髪を解くムウの姿を思い出し、貴鬼は再び溜め息をついた。

「それは仕方あるまい。あれぐらいの年の子供は可愛いものだ」

ましてや、羅喜は女の子…目一杯甘やかしたくなってしまう。

「しかし……」
「む……そういえば、セージから聞いた事があるぞ?」
ハクレイはぽんと手を叩くと、言葉を続ける。

「昔、わしとシオンがお主を甘やかしていた時、ムウがふてくされておったそうじゃ」
「ムウ様が……!?」
「そうじゃ。弟子をわし等に取られて、嫉妬しておったそうじゃぞ」

しかも、ヘッドパーツをぴかぴかにする所まで同じである。

(…ムウ様…今なら気持ちが分かります…)
「お主も、もっと昔のようにもっと甘えても良いのだぞ?」

ハクレイはぐしゃりと、貴鬼の頭を撫でる。

「……ありがとうございます、ハクレイ様」
貴鬼は苦笑を浮かべると、手にしていた磨き布を作業机の上に置いた。

「貴鬼様〜!!」
「おっと、弟子が呼んでおるぞ?」
「えぇ…ちょっと行ってきます」

貴鬼は瞬間移動を使用し、愛弟子の元へと向かった。

「やれやれ…わし等の遺伝子には、孫弟子を愛でる特性でもあるんじゃろうか……」
残されたヘッドパーツを撫でながら、ハクレイはそう呟いたのであった。



終わり
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ