短編

□解けて
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−−−じゃあ、あとでね。

オセオンでそう言って別れたクラスメイトの顔が不意に浮かんで、意識が浮上した。

なんとか川から這い上がったところで気を失ったらしい。水を吸ったコスチュームのせいか純粋に重傷なのか、恐らくどちらもだろうが、身体がとてつもなく重い。

あれからどれくらい経ったのだろう。緑谷と爆豪は、仲間の安否は、状況は。思考が回らない。

(猫堂、に、連絡しねぇと…)

緑谷を探しに出てから、ろくに連絡をとれていない。本部に送った情報でこちらの同行は把握しているはずだが、心配しているだろう。

彼女には心配をかけたくない。
彼女には、猫堂には、

「轟ッ!!」
「!」

今まさに考えていた人物の声がして、驚いて目を開ける。

鼻先数センチの距離に、息を切らした猫堂がいた。

「猫堂、」
「さっき緑谷ともう一人の男の子が地下から上がってきた!爆豪も無事!トリガーボムは止まって、他の国のみんなも大丈夫!」

いっきにまくしたてた猫堂が、こちらの両肩に手を添えて俯き、深くため息をついた。

「んで、轟も無事…だよね?」
「…あぁ、なんとかな」
「…はあぁ」

無事だ大丈夫だと、殆ど自分に言い聞かせていたのだろう。やっぱり心配をかけてしまった。声を出すのが億劫で、代わりにこちらを向くつむじに手を乗せると、じとりとした目と視線が交わる。

「人のこと労ってる場合じゃないからな、重傷要救助者」
「わりぃ」
「悪くない」

じゃあどう返せばいいんだ、と言う代わりに、ここまで必死に走ってきたからだろう、くしゃくしゃに乱れた前髪を撫でた。視界の奥から救急隊と警察が駆けてくるのが見える。

どうやら、終わったらしい。
終わって、目の前にいるクラスメイトは泣いていない。
上々だ。

「ナイスファイト、お疲れ、ありがと」
「…おう」
「わ、おも」

細い肩に体重を乗せると、意外としっかり受け止められた。




解けて、


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