Zillo'll
□破滅の中で恋をした。
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この言葉に彼の腕が一瞬動きを鈍くした。
彼にとってなによりも大切なのはティナ姉ぇ様だと知っている。
レムオンを深い闇から救ったのは、間違いなく彼女だからだ。
ティナ姉ぇ様はレムオンの義妹。
しかし、二人は互いを信じ、愛している。この愛が美しいとは思いしも、淫らだとは感じない。
正直、少しだけ羨ましいと思う。
「早く食べないと残さず誰かさん達に食べられちゃいますよね。私、まだ食べてないんですよ」
彼がそれを聞いて苦笑いをしたのを確認してから豪華な食事の中へと歩いていく。
皿を手にして、先程までいた場所を振り返る。
そこには言い合いをしている金髪と赤髪の男女が見えた。
「サレス、これが美味しかったぞ」
持っていた皿の中に海老が入れられる。
「ありがとう。兄様」
いつの間にか隣にいた茶髪の優しそうな男性。
これがサレスの実の兄。ロイだ。
「お前はロイにいつまで甘えるつもりだ?」
ロイの隣にいた黒髪長髪の男性、仲間の中で一番長く付き合っているセラだ。
「セラには言われたくありません」
兄からもらった海老を口に運び、セラを一瞥する。
「貴方だって同じじゃないですか」
姉が一番大切だと豪語するセラに『ブラコン』と言われたのが気に障り、顔を背けて海老を頬張る。
「まぁ、良いじゃないか。家族は大切にするものだよ」
二人を諭すようにロイが優しく言う。
その言葉に騙され、サレスはセラを見上げた。
彼はこちらを睨んではいたものの、ロイがその肩に手を置くと諦めたようにため息をついた。
セラの顔から怒りがなくなったのを長年の経験で見抜き、彼女自身も力を抜いた。