Zillo'll

□夜中のデート。
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「朝陽、一緒に見たことないですよね?」

先に話をふったのは彼女の方からだった。

もう別れの時間。


決めてはいないが、それは二人の間での暗黙の了解になっていた。
いや、俺が一方的にこれ以上居たらいけないと思い、勝手に消えるだけなのだが…


「見たこと…ないな」

白々しい。
自分にそう言いながら、自分も被害者ぶる。
彼女はいつにも増して微笑む。

「なら、一緒に見ましょう!」

その言葉を待っての返事だ。
なんの不満があると思った?

俺はそう心の中で呟いて、顔には出さないように気をつけた。
嬉しさでにやける筋肉さえ、今の俺にはないけれど。

「…イヤですか?」

眉ひとつ動かさない俺に、彼女は不安げな様子を見せた。

そうだ。

コイツはただでさえ、あの鉄面皮らと付き合って旅をしたり話し相手になっている。
顔を無表情にしている事は、アイツらと同じで嫌がっているというアピールになるのかめしれない。

「…別に嫌だなんて誰も言ってねーよ」

彼女はその言葉に安堵したため息をおとす。

「良かった」

彼女が呟いた言葉に顔が熱くなるのを感じる。

「なぁ、前から聞いてみたかった事があるんだけど…いい?」

「なんでもどうぞ」

緩みきった笑顔を向ける。
その顔に警戒の二言は見当たらない。



「アンタ、俺の顔が好みなの?」

「いいえ。好み…ではないです」

可笑しな質問ですね と笑って話す彼女の顔が胸に突き刺さる。

「そっか」

そうだよな。

「なら、どうして俺なんかにかまうんだ?」
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